ミニバンのシャシーで「スポーツ」
前回はRAV4とCX-5の設計上の大きな違いについて書いたのだけど、同じくカローラスポーツとMAZDA3スポーツバックの違いも「ミニバン風とグランドツアラー」だと結論しちゃってもいいかもしれない。トヨタが作るFF車は全部ミニバン風だ!!ってのはちょっと乱暴かもしれないが、ミニバンの設計を主眼に置いたプラットフォームを使って、MAZDA3やインプレッサと同じようなクルマを仕立てることには無理がある。前にも一度書いたけどMAZDA3やインプレッサがカローラスポーツより総合的に劣るクルマだったら、マツダもスバルもさっさと廃業した方がいい。
自らの幼稚さを認める
トヨタのCセグハッチバックで初めてHVが採用された。以前にTHSを国内のどっかのメーカーに貸し出し、そのメーカーがメチャクチャなブレーキングフィールを徹底的に作り直してしまったことで、トヨタは大いなるフィードバックを得ることができた。現行のプリウスの発売は1年延期。豊田章男社長はのちに「トヨタのクルマ作りの幼稚さを思い知らされた」と心情を吐露していた。元々欧州市場でも定評があったその国内メーカーの走りに近いクルマが出来た!!と胸を張るトヨタだけども、実際に現行プリウスと現行カローラに至っての「走り」の進化の幅は大きい。
セールスポイント主義
THSという「錦の御旗」を立て、トヨタが長年培ってきた「ショックレス」な乗り心地を維持したままに、このご時世でもドライバビリティにおいて先代から「飛躍的な進歩」を見せたことを考えれば、プリウス&カローラが日本の普通車市場においてSUVブームやミニバンブームに流されない地位を得るのは納得できる。MAZDA3やインプレッサは車体骨格だったり、ミッションやサスペンションの仕上がりに独自の解釈を見せてはいるものの、「錦の御旗」もなければ「ショックレス」の追求にも消極的だ。
フォルクスワーゲンはCセグを諦めた!?
「Cセグハッチバック=欧州の激戦区」などと言われているけど、現実にはSUVブームやよりコンパクトなBセグの市場がどんどん伸びていて、今ではどのブランドのCセグハッチバックもシェアを落としているのが現状だ。日本のカーメディアでは「全知全能の神」みたいに扱われているVWゴルフも進化の方向性を見失っている。ゴルフを追うフランス勢のトップシェアモデルは、プジョー308でもメガーヌでもなく、日産が基盤を作ったBセグのルノー・クリオ(ルーテシア)だ。
なぜ日本メーカーは本気になれるのか!?
カローラスポーツは「THSの進化」の時系列に乗っていて、インプレッサは愚直にCセグのフォーマットで頂点を目指し、MAZDA3はちょっと雲をつかむような話に聞こえるけど「新しい価値観」の提供を信念としている。Cセグ&エンジン車はそろそろ店じまいしそうなVW、GM、フォードといった世界の大手グループとはまるで温度差が違う。金融とITやフィンテックが切り開くアメリカやEUに対して、日本ではまだまだ「メーカー」のファンダメンタルな重みが社会で幅を利かせているのだろう。
トヨタを強さ
トヨタ、マツダ、スバルがフォーマットを変えないままの「進化」を選び、テスラや欧州メーカーが目指す「電動化」を契機とした既存フォーマットの「解体」を目指す。そんな2つのベクトルがあることがわかった上で、次期モデルを開発して勝負しなければいけないメーカーの開発者は尋常なメンタルではいられないだろう。昨日まで熱心なMAZDAファンだったユーザーが、突然にフル電動車の走りに魅了されこれまでの価値観を変えることだって十分にあり得る。安易な結論かもしれないけど、巨大な変化の前に足がすくんで、やや煮え切らない姿勢を見せてしまったインプレッサとMAZDA3の仕上がりに対して、プリウスやカローラの思いのほかに爽快な「フルスイング」な進化はやはりTHSへの確固たる信頼があってこそなのだろう。本来ならプラットフォームの段階で勝負にならないレベル差になるはずが、思わぬ接近戦となっている背景がちょっと見えた気がする・・・。
腰が引けたマツダとスバル
マツダ、スバル、トヨタのクルマ作りの差異はまだまだ明確に存在するのだけど、それでもマツダファンからみたMAZDA3と、スバルファンからみたインプレッサには、どちらも「期待値未満」という想いがある。マツダ(スバル)の力はそんなもんじゃねーだろ!!カローラにお尻をかじられている場合じゃない。プリウスやカローラがリアをDWBでどっしりさせてきたのなら、MAZDA3はリアはTBだとしても、フロントはDWBにしてもっと明確にスポーツカー化を意識させてもよかったのではないか!?インプレッサにしてもFA20あるいはFA20DITを搭載するグレードがあっても良かったんじゃないか!?
ファンは「こだわり」を求めている
マツダファン(スバルファン)がマツダ(スバル)を買うときは、「マツダ(スバル)らしいこだわり」を感じたときだろう。スカイX搭載グレードは、ファンからの熱い支持を得ることができるだろうけど、それでもロータリー搭載の専用設計スポーツカーやショートストロークのMZR搭載にフロント=DWB、リア=マルチリンクで世界をひっくり返してきた歴代のマツダ車に比べれば、インパクトは・・・どうだろうか!?スバルについてはオーナーだったことがないのでよくわからないけど、免許取り立ての若者がどれだけ現行のインプレッサに吸い寄せられるだろうか!?FA20が搭載されてたら話は別だが・・・。
戦う体勢ではない!?
MAZDA3、インプレッサ、カローラスポーツのどれかを買え!!と言われたら、おそらくMAZDA3にするだろうけど、(離れて暮らしている)母親や妹に絶対にオススメ!!とまでは言えない。自分が運転しないクルマだとしたら、フルスイングの「進化」を遂げたカローラスポーツに「バリュー」とやらを感じる。衝突安全基準の結果がちょっと気になるけど(インプとMAZDA3はほぼパーフェクト)。素人の意見で恐縮だけど、世界が認める王者トヨタがプライドを捨てて(他社のブレーキをパクる)でも良いクルマを作ろうとしているのだから、マツダもスバルもそれなりの覚悟を見せるべきではないだろうか。インプレッサもMAZDA3も隠居老人を相手に売れればそれでいいってことなのか!?
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