トヨタ・改革への強い意志
すでにトップを走る「世界のトヨタ」ではあるけども、トップダウンによる強権発動で「改革」を断行し、20世紀型ビジネスの自動車産業に大いなる価値を与えて「社会のためになるトヨタ」を目指すらしい。これまでも十分に社会に役立つ存在だったと思いますが、トップランナーとは自らを突き動かす「衝動」を求めたくなるらしい。そして「愛されるトヨタ」になりたいようだ。「トヨタは他の自動車メーカーとは違うのです!!」そんなプライドは随所に感じるがゆえに、あまり親近感が湧かないってこともあるかもしれないが・・・。
新しいのか!?古いのか!?
どこか日本の首相のような「愛されキャラ」な雰囲気を持つ豊田章男社長は、アベノミクスならぬ「トヨタイムズ」を掲げ、いいクルマを作ります!!と力強く語りかける(国民はこういうキャラがツボ)。世界のトップを走る巨大自動車メーカーが、さらなる社会との接点を求めて改革をしているワケだが、「お神輿」様の口から溢れ落ちる具体的なメッセージは、半世紀も昔にリー=アイアコッカがやっていたこととそれほど変わらない気がする。「いいクルマを作る」そのためにクルマ作りのお手本にするのは「メルセデス」と「マツダ」とのことですが、この両社は人気はあるけど売上規模はトヨタの足元にも及ばない。
新型モデルはとても多いが・・・
Cクラスのような質感を求めてプリウスのボデーは逞しくなっているし、同じくマツダの開発したハイブリッド用ブレーキのフィールを真似て乗り味も格段に進歩したけども、プリウスの商品力はユーザーにしか伝わっていないかもしれない。高品質・高性能なクルマを高級ブランドで新車が買える価格で販売すればOKならば、世界一コピーが上手いトヨタにとっては朝飯前だろう。デジャブ感満載のプリウスに対してクルマ好きはどこか冷ややかだ。スープラ、RAV4、カローラと立て続けに新型モデルが発売されているけど、今年のWCOTYでもカローラは予選落ちで、グランプリはなんと隣国のKIAに奪われてしまったよ。
二兎追うものは
それでも「トヨタ車は随分良くなった!!」との声がよく聞かれる。プレミオを使う実家にやってくるセールスマンも新型カローラをかなり強く推してくるらしい。カタログや見積書を見る限りは、まだまだトヨタの改革は先なんだなと感じる。新型カローラは若いユーザーが欲しいという願いもあってエンジン&ミッションのバリエーションが多くて、実際に興味がある若者も多いと思うが、カタログのデザインを見て「これは高齢者向けなのか?」とふと猜疑的な気分になってしまうこともあるだろう。MINI、MAZDAのパンフ&カタログはデザインが秀逸だし、メルセデス、BMWのディーラーはとにかく満足感に配慮がされている。クルマを買うんだから関係ない!!という人もいるだろうが、それら全てから「客層」を想起させてしまうのが現実だ・・・。
価格設定はさすがだが・・・
プレミオを使う還暦越えのユーザー(母親)には、最初からセダンのボトムグレードが提示されるシステムらしい。プレミオ/アリオンの1.5L最廉価グレード193万円と全く同じ本体価格で新型カローラセダンの1.8Lのモデルが買えてしまうカラクリ。プレミオに比べてボデーサイズもわずかに大きくなっているくらいで使い勝手はほぼ同じだろう。とてもわかりやすい設定価格だとは思うけども、還暦を超えた年齢になると、同じタイプの車ではなく、スポーツカーだかSUVだかに乗ってみたくなるものらしい。確かにトヨタが本気を出して若者向けに作った86やC-HRは予想以上に高齢者にウケている。高齢者から若者まで幅広く想定して作ったカローラは、どうも若者に訴求する舞台装置が上手く機能していない。カローラスポーツのCMはいい感じだった気がするが・・・。
若者✖️ツアラー 相性はいいはず
もう少しだけ若い人が気分良く買えるような演出があってもいいのかもしれない。北米版カローラをベースにした骨太な雰囲気もCDセグといった感じで良いと思うし、価格設定なども含めてクルマに興味がある若者にとっては良いチョイスになる資格が十分にある。1.8Lエンジンならば高速道路の巡行もかなり静かになるし、いろいろな場所へ足を伸ばして見聞を広めるのにもサイズがちょうどいい。国道・都道府県道レベルであれば問題なく走行できる。ちょっと惜しいなという気がしてならない。
WRCやってます!!の意地
仕切り直しで投入されるヤリスは、おそらくトヨタの開発者にとってはカローラ以上の自信作だと思われる。特に1.5Lダイナミックフォースエンジン(DFE)搭載のMTモデルは価格設定を見るだけで、小型車市場で高い評価を受ける既存モデルへの敵対心をひしひしと感じる。(1.5Lガソリンの)ベースグレードは154万円だけども、ターゲットはMAZDA2の競技車両グレードである「15MB(165万円)」!? 15MB専用のハイオク指定ユニットは通常モデルより10%ほどのメカチューン・スープアップを実現した「116ps/6000rpm 15.2kgr・m/4000rpm」となっているが、DFEの1.5Lはレギュラーながら「120ps/6600rpm 14.8kgr・m/5200rpm」 さすがにハイオク仕様だけあって燃費(WLTC)と最大トルク値はMAZDA2・15MBが優っているけども、何だか「トヨタとマツダの立場が逆転してる!!」とツッコミを入れたくなる・・・。
自作自演だろうけど・・・
さらに最上級グレードの「Z」は187万円でスイスポと全く同じ価格設定に。15MBもスイスポも販売面で大きな数字を出すモデルではないゆえに、あえてそこに競りかけることでユーザーの関心を掘り起こそうとしているのかもしれない。ちなみにマツダもスズキもトヨタとのアライアンスを締結済み。しかし小型車向けエンジンでは非常に定評があるマツダ、スズキを相手に互角以上の戦闘力を見せる「ダイナミックフォースエンジン」のお披露目にはちょうど良い舞台なのだろう。そしてトヨタイムズで掲げている「モータースポーツの知見を還元する!!」という宣言に合致した良いプロダクトだと思う。
「ONENESS」は最高の商品力
もちろんマツダ、スズキにもハンドリングやシフトフィールなど、エンジンだけではない「一体感(ONENESS)」の表現手法において色々なアドバンテージがあるので決して全面的に負けたわけではない。スイスポ(先代)とレクサスIS350にほぼ同時期に試乗したことがあるが、どちらもスポーティを謳うモデルで価格差は約3倍。それでもドライビングフィールだけを基準にジャッジするならば、スイスポの完成度が完全に上だと断言できるレベルだった。MAZDA、PORSCHE以外のブランドではなかなか得られないほどのスピリッチュアルな試乗体験の感覚は今も鮮明にある。
レクサスがスイスポに勝てない理由
どんなにラグジュアリーな内外装であっても、背筋がゾクゾクするような「ONENESS」体験の前には何の意味もない。少なくとも走ってこそクルマの価値があるとする「まともな人」の判断においては、これ無しに「趣味」のクルマなんてありえない。MAZDA、PORSCHE、FERRARI、LAMBORGHINI、LOTUS、MINI・・・これらは幾多の経営難を乗り越えて奇跡的に存続しているメーカーだが、いずれも「ONENESS」を忘れることなくクルマ作りを続けてきたことが評価されて世界中にファンを生んできた。多くのメーカーが潰れてきた中でこれらのブランドが生き残ったのは偶然だろうか!? たとえ30兆円の売り上げを誇るTOYOTAといえどもいつまでも安泰ではないかもしれない。生き残るためにはTOYOTAなりの「ONENESS」を提供できるクルマを用意する必要があると判断したのではないか?
4代目スターレットが復活!?
学生時代の友人は中古で買った4代目スターレット(華の1989年組)を大事にしていた。何度か隣に乗せてもらったが、運転がとても楽しそうだった記憶がある。同じく学生時代に1ヶ月鹿児島県の僻地に滞在したことがあり、その際にヴィッツを1ヶ月借りた。どこまで走っても信号なんてないワインディングロードが続く最高の環境だったかもしれないが、1Lエンジンのヴィッツがとても気持ちよいクルマだと思った。クルマっていいなと思った原体験となっている。トヨタの最も輝かしいドライビングフィールを蘇らせる小型ボデーにわざわざNAで使うために新開発されたエンジンを組み合わせている。「楽しいトヨタ」が長い眠りから覚める時がきた!?
トヨタには珍しい「趣味」のクルマ
より大きなボデーのモデルでも「ONENESS」を実現できてしまっているMAZDA、HONDA、BMWなどは確かに素晴らしい。中型車ではなかなかその領域にたどり着けない印象であったTOYOTAも、4代目スターレットのような歴代モデルで多くのクルマ好きを魅了してきた実績がある。カローラスポーツではちょっとツアラー的な要素が強く、期待の新型「NAエンジン」も採用されていない。軽量化とエンジンの向上により、マツダとスズキを露骨にベンチマークした痕が伺えるだけあって、念頭に置いていたコンセプトは「ONENESS」の追求だろうし、確かに大きく接近した。このクルマは日本各地で日常のカーライフを楽しむオッサンをさらに幸せにしてくれるだろう。
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