ハリアーだけ使い続ける
セルシオ、アリスト、ウィンダム、アルテッツァ、ソアラ、ハリアー かつてトヨタブランドの上級モデルに使われた車名だが、現行モデルではハリアー以外は使われていない。これらは1989年にアメリカで開業したレクサスブランド向けモデルの日本市場での名称であり、2000年代前半まで使われた。北米のプレミアム市場向けのモデルなので他のトヨタモデルより高性能で人気が高いものが多かった。で?なんでハリアーだけ生き残っているの?
シャシーをアップデート
そんなハリアーのフルモデルチェンジが発表され、6月から販売されるらしい。トヨタヒエラルキーにおいては、現行ハリアーは先代プリウスのSUV版という位置づけだったのが、ランクアップしてRAV4のバージョン違い版へと格上げされた。他社設計のシャシーがたくさん組み込まれるようになったトヨタブランドの階層はグチャグチャなのだが、大筋で以下のように序列される。最廉価モデル価格を基準に格付けすると、
G13 トヨタGA-Lプラットフォーム(LS、LC)
G12 トヨタ改良Nプラットフォーム(IS、GS)
G11 トヨタGA-Nプラットフォーム(クラウン)
G10 他社CLARプラットフォーム(スープラ)
G9 トヨタGA-Kプラットフォーム(ES、RX、カムリ、RAV4、新型ハリアー)
G8 トヨタGA-Cプラットフォーム(UX、プリウス、C-HR、カローラ)
G7 他社プラットフォーム(86)
G6 トヨタMCプラットフォーム(現行ハリアー、NX、アルファード、ノア)
G5 トヨタGA-Bプラットフォーム(ヤリス)
G4 ダイハツDNGA-Bプラットフォーム(ライズ)
G3 トヨタBプラットフォーム(アクア、ポルテ、ジャパンタクシー)
G2 ダイハツBプラットフォーム(パッソ、ルーミー)
G1 ダイハツAプラットフォーム(ピクシス)
ラダーフレームのランクルやハイラックスを除いた乗用車シャシーだけでも13のプラットフォームが混在している。今回のFMCによってハリアーは3ランクアップという異例の出世を遂げた。
RAV4のダンピング価格
北米では横並びの価格で販売されているRAV4とホンダCR-Vが相次いで日本に投入され、メイングレード同士の比較で326万円と329万円ですが、RAV4には「X」というスペシャルグレードが設定され265万円の特別価格で提供されたことで反響が大きかったようだ。トヨタの本気を感じ取ったカーメディア界隈もこれに応じたようで日本COTYに選んだようだ。確かにRAV4は「サイズを我慢する必要ない」のにお手頃価格であることで「おや!?」と思った人は多いはず。
AJAJのS下さんが・・・
RAV4の「感動価格」演出に一役買ったのが、2014年に発売されていた現行ハリアー。ネーミングこそ旧レクサスの生き残りですが、レクサスRXとは全く別のクルマに引き離された国内専売モデルとなり、他社のSUVよりも「高級感」を打ち出した演出で価格も高めに設定されていたようです。AJAJ会員のS下さんが、どっかの雑誌のコラムでハリアーのトリムに見られるダミーな加飾を目ざとく見つけて「糸を這わせているだけで縫っていない!!」「レクサスでは絶対にありえない!!」と憤りを見せていた・・・。
ハリアー・アップデート戦略の裏側
トヨタのすごいところは、クルマ好きやAJAJ評論家ですら失笑するくらいの300万円以上するクルマをそこそこ売ってしまうところ。ハリアーも決して失敗ではなく大ヒット御礼だった全盛期のCX-5やエクストレイルと同等くらいには売れていた。しかしトヨタにとってはマツダや日産と同じ土俵で互角しか売れないならば「失敗」と判断されてしまうのかもしれない。さらに穿った見方をすれば2014年前後の段階で予想されたSUVの過剰気味のブームでは、どんな設計でもそこそこは売ることができるけど、2020年になりSUVの購入が2回目という人が多くなるタイミングでハリアーの性能を上げるという中長期的な計画があったのかもしれない。
トヨタの新型モデルは面白い
RAV4、カローラ、ヤリスにも同じことが言えるけどトヨタの新型モデルのデザイン、仕様、価格を見ると、発売前の日本市場のライバルモデルの中で、どのブランドのものがトヨタによって評価されているかがわかって面白い。RAV4では、プジョー3008の前衛的なデザイン、スズキのエスクード&SX4・SクロスのAWDモデルが導入したマニュアル切り替えAWDモード、JEEPの無骨さとポップさを組み合わせたエクステリアが取り入れられたようだ。カローラはメルセデスAクラスセダン、MAZDAのMTグレードの多さくらいか。ヤリスにはMAZDAのNAエンジン&MTドライブとチルト&テレスコの充実、それからアウディA1に近似したデザイン。
SUVの未来が見える!?
新型ハリアーでは、シトロエンの上級モデルで採用されていたパノラマミックルーフの採用と、エクステリアデザインはどうやらポルシェのマカン&カイエンの意匠をそのまま失敬しているようだ。レクサスRXやNXは「都会派」としてメルセデスSUVのようにハッキリしたキャラクターラインをボデー側面に描いているけども、新型ハリアーのボデーラインはその真逆で柔らかくてあまり主張していない。ポルシェ、ボルボ、マツダのSUVに雰囲気が似た仕上がりになりそうだ。
「差別化」の段階に突入
高級SUVはキャッチーじゃないと売れなくなってきた。失礼を承知で書いてしまうと、アウディとBMWのSUVが売れないのは日本価格が高いことと、デザインがちょっと「イモっぽい」ところが原因だと思う。クルマの素性だけで考えればトヨタのプラドが評価できるのだけど、「都会派」の大ブームもあって末期のハリアーと同じくらいしか売れていない(健闘!?)。プラドも北米ではすでにフェイスリフト済みなので日本向けもMCあるかも。
トヨタの「都会派」制圧計画
売れている「都会派」SUVはエクステリアに関して大きく3つのジャンルに分かれてきた。メルセデス、プジョーのW最古ブランドのSUVはエッジで、ポルシェ、ボルボは洗練された統一デザインで、ジープやランドローバーは本家のアイコン力で、「特別」=「都会派」を表現してるけど、もうお分かりかもしれないが、トヨタの策定したSUVのエクステリア戦略は、RX、RAV4でエッジ、新型ハリアーで統一性、次期プラドでアイコン力・・・と三方向に万全の体制を築くことを目指していると思われる。