日本市場でプレミアムSUVなんて・・・
日本市場で展開する全ての総合自動車メーカーが発売されるようになり、「SUV戦国時代」は新しい局面を迎えている。どのメーカーの新型SUVも「価格競争力」さえ備わっていればそこそこ売れるし、しばらくは同じ状況が続くだろうけど、「プレミアム」を主張するSUVに関してはまだまだ成功例が少なくどんなトリガーにユーザーは反応するのか定義されていない。
CX-3はなぜ売れなかったか・・・
名指しで失礼だけど、盛大なる失敗例として真っ先に思いつくのはMAZDAのCX-3だろうか。ディーラーの人に言わせればCX-5を売るための客寄せパンダらしい。デザインは全SUVの中でも屈指のまとまりを持つけど、スタイルを優先させたためにホンダ・ヴェゼルのようなキャビン空間が提供できない。一人で乗るためのクルマとしては申し分のない装備なんだけど、ほとんど価格が変わらないCX-5を見せられたらちょっと買いづらい。そして一人乗りマシンとしてはMAZDAにはアレがあるわけだし・・・。
高級なSUVとは!?
ちょっと基準がわかりにくいけど、B/C/DセグのSUVは「Bセグ1人乗り」「Cセグ1〜2人乗り」「C/Dセグ1〜4人乗り」の3つのクラスが各メーカーで想定されているようだ。実際はどれも定員5人ではあるけど、ロングライドする際のちょうど良い人数を基準に考えてみた。ナビシートに誰かを乗せたいなら「Cセグ1〜2人乗り」(C-HR、CX-30)、ファミリーで使うなら「C/Dセグ1〜4人乗り」(RAV4、CX-5)なのだけど、これらのモデルはかなり価格競争力があるので「プレミアム路線」で売っているとは言い難い。
先駆者はやっぱりBMW
「Cセグ1〜2人乗り」なら400万円以上、「C/Dセグ1〜4人乗り」なら600万円以上の価格帯だと、多くの人にとっては「高い」と感じるが、このゾーンはメルセデス、BMW、アウディが次々にモデルを送り込んでいるけど、ことごとく惨敗している。先代のFR仕様だったBMW・X1はかなり頑張ってドイツ御三家では唯一の成功例となったが、FF化された現行は苦戦している。
業界激震!!こんなに売れるとは・・・
2019年日本市場で最も売れたレクサスは「UX」だった。月平均1,000台を超える12,551台は、先代X1のピーク時すらも越えている。価格帯もほぼ同じなので、これは快挙と言っていい数字だ。「ボトムでもいいからレクサスに乗りたい人が買っただけ」とか言いがかりをつけてくる人もいるだろうけど、「UX」の実車はこれまでのレクサスよりも使う人のイメージが想起されやすい。「洗練」というよりは「ゆとり」でシェアを獲得したクルマだとわかる。おそらくそこそこお金を持っていて色々なブランドのモデルが選べる立場のユーザーに刺さったのだろう。TNGA-MCプラットフォームなのに400〜550万円という規格外な価格設定でこれだけ売れるとは・・・。
成功の理由は!?
レクサス車初の女性主査が担当したモデルらしい。これだけスマッシュヒットしてしたのだから、レクサスの小型モデルにはこれからは女性主査が次々と抜擢されるだろう。そもそも自動車とは女性全般と男性の若年層/高齢者向けのものだ。35〜65歳くらいの男性にとっては日本で売られている90%以上のクルマは似合わない。電車に乗ってると、50歳を越えた老け顔のオッサンが意味不明なスタイルの服を着ていて思わず目を背けたくなることはよくある。90%の市販車もまた「意味不明なスタイルの服」に近い。老け顔のオッサンがピンクのKカーに乗っているのは見たくない・・・。
アラフィフ女性の意見は面白い
レクサスが新しい「プレミアム」を定義するとは少々意外だったけども、考えて見えればものすごく合理的なことをやっている。アラフィフ女性の意見がそのまま「商品性」になることを示したわけだ。感心するのはUXの細部には特段に「セコい」と感じる部分ががほとんどないこと。男の持ち物としても十分に品格を発揮している。35〜65歳くらいのオッサンの所有するモノは、全てアラフィフ女性の意見を参考に選んだ方がいいのかもしれない。ちょっとピンときてない人には、できれば山田詠美とか三浦しをんの作品を読んで頂くと、なんとなくわかってもらえるかもしれない(メチャクチャ面白い)。
MAZDAを弾き返す
日本のプレミアム志向ブランドといえば、レクサスを追い越せとばかりに改革を進めてきたMAZDA。新型モデルが出るたびに、開発主査や主任デザイナーが各種メディアに露出するのが定番になってきたけど、どんな人選を経ているのかわからないが、どの人も山田詠美の世界観に登場してきそうな、とてつもない清潔感とハイセンスな行動様式を持つLGBTの男性が漏れなく備えている「ナルシズム」を湛えている。とにかくゲイっぽいMAZDAとの主導権争いに、アラファフ女性目線で健全なレクサス(UXのみ)が逆転勝利を果たした。MAZDAも中国市場で販売しているCX-4をいち早く日本に導入していれば・・・。
デザインより「ゆとり」
「Cセグ1〜2人乗り」のプレミアムスタイルはレクサスUXによってひとまず定義された(ドイツブランドが真似するのも時間の問題)。4200mm前後のボデーのものが多い中で、4500mm前後の「ゆとり」のサイズにわざわざ「1〜2人乗り」のスペース割りをしている。CX-5のサイズを擁しながらインテリアはゆったりと「1〜2人乗り」に割り切って作ったようなクルマだ。先に成功を納めた先代X1はあくまで「C/Dセグ1〜4人乗り」に属するタイプであり、それを「1〜2人乗り」に転換したものがX2なのだけど、このモデルがUXに惨敗した理由は・・・「走り(FF化)」でも「内装」でもなくエクステリアなんだろうな。
もう一つの戦場では・・・
ちなみに「C/Dセグ1〜4人乗り」のプレミアムスタイルを主導するのはポルシェ・マカン。このクルマから主役の座を奪う新型モデルは、これからのレクサスとMAZDAにとってブランドの最重要課題となっていることだろう。4700mmクラスのボデーに、過不足ない絶妙なバランスでくつろげる前後シートを配置し、クルマ全体の取り回しや走行性能から、エンジンやミッションの選択まで高いレベルでの総合力が要求される。レクサスならTHSとアラフィフ女性主査の組み合わせでどれだけ隙のないモデルに仕上げられるか、MAZDAならば縦置きシャシー&直6スカイXでポルシェと真っ向勝負できるか・・・の戦いになりそうだ。なかなか期待できそう。
CARDRIVEGOGOはMAZDAとPORSCHEが好きです。「UX」登場が俄然面白くなった中で、両社がどんな次期モデルを作って対峙するのかに注目しています。
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