非常事態
新型コロナの影響から逃れられない2020年4月の国内メーカー販売概況が発表された。新車効果もあって小型車(5ナンバー)ではダイハツとホンダが前年同月を上回る健闘を見せてますが、販売台数が多くないため納期も短い3ナンバー車の販売はどこも壊滅的な結果・・・今は我慢するしかない。
2020年4月の3ナンバー販売(前年同月比)
ダイハツ 80%(トヨタOEM車のみ)
ホンダ 60.1%
レクサス 76.7%
MAZDA 83.0%
三菱 35.2%
日産 42.9%
スバル 43.1%
スズキ 53.4%
トヨタ 66.8%
新車効果
日本市場に導入され15年がたち、分不相応なユーザーが減ったこともあってか、富裕層に支えられレクサスは安定感があり他のブランドを圧倒している。カムリやプリウスのOEM車を8台だけ販売したダイハツは別にすると、レクサスに唯一食い下がったのが広島のローカルメーカーMAZDAだった。日本のカーメディアからはとにかくブーイングの嵐だったMAZDA3&CX-30の新車効果が効いている。スカイXを年明けまで延期したことで2020年になってから注文した人も多いようだ。とりあえずモデル名変更や数字を二桁にしてまで、なりふり構わずフルモデルチェンジをアピールした効果が現れた!?
MAZDA支持の理由
MAZDA3とCX-30の2台ともにWCOTYの最終候補3台に残るなど、欧州では完全に「Cセグ最強」の太鼓判が押されている。激辛な英国カーメディアもまるで英国メーカー(ジャガー)か英国生産車(シビック、キャッシュカイ)かのような、可愛がりぶりが印象的だ。1990年頃の俣野努(NAロードスター、FD3S)、荒川健(ユーノスプレッソ、ユーノス500)、佐藤洋一(FD3S、GHアテンザ)の時代から乗用車ブランドとしては世界ナンバー1のデザイン力を発揮してきたけど、さすがに覇道が30年も続ければ、英国メディアも空いた口が塞がらない。
OEM不可能なレベル
もし新型コロナの業績悪化でMAZDAがどっかのブランドのOEMファクトリーに成り下がったとしても、MAZDA3と CX-30を自ブランドのモデルとして並べられるだけの品格を備えた欧州の有名ブランドがどれほどあるだろうか!?プジョー、アルファロメオ、アウディなどの個性的な欧州ブランドにもちろん敬意を持ってはいるけども、アウディA3の代わりにMAZDA3は、さすがにかっこ良過ぎてブランドヒエラルキーのバランスを崩壊させてしまう。もちろんアウディの既存の全ラインナップも十分過ぎるくらいにかっこいいが・・・。
トヨタの2台よりも・・・
トヨタが唯ならぬ執念で完成させ日本市場でも販売しているRAV4とカローラはとてもいいクルマだと思う。トヨタ系列ディーラーは面倒見がとても良いので、信頼して長く付き合っている人も多いけど、そんな人にとっては選択肢にRAV4とカローラが加わったことは大歓迎だろう。しかもどちらもエントリー価格はライバルを意識したスーパー「ダンピング」プライス。それでもやはり乗り換え需要が中心だったようで新車効果はかなり薄れてしまった。
狂気すら感じる・・・
MAZDAが好きで好きでたまらない人に、「MAZDAとトヨタの違い」を訊けば、おそらく「美学」と「実利」の違いだと宣うのかもしれない。全ての非欧州メーカーの中で、欧州市場の販売比率が20%にも達するのはMAZDAだけ。今では欧州メーカーでもほとんど例がないけど、中国市場より欧州市場でより多くの台数を売る数少ないブランド。おそらくMAZDAとSUBARU(旧中島飛行機の軍国主義のイメージがあり中国で売れない)だけだ。日本のカーメディアに散々に笑われているけど、なんとも商売気質に欠けるメーカーであることは確かだ。
責任感
どんな迷信かわからないけど、クルマとは時代性や文化を「表象」するという意味で他の工業製品とは別格の存在であると考えているらしい。確かに「北欧家具」とは、産地がどこか?はなくて「センスが良い」ことが存在意義になっている。欧州の美しい街並みを守るためには「美しいクルマ」が必要であるので、そのために死に物狂いで美しいデザインを追求している。80年代の日本メーカーの「侵攻」によって、現地メーカーの「美学」が大きく損なわれてしまった。MAZDAの使命とは日本の護送船団が期せずして破壊してしまった「クルマ文化」を全力で回復・保護することにあるらしい。欧州の自動車文化を守り、日本の瀬戸内地域の経済を守る・・・そんなかっこいいことばかりを言っているから、日本のカーメディア(オール・ブサイク)から皮肉を浴びせられ、ボロクソに叩かれる。
欧州の自動車文化を作った男
誰もが認めるだろうけど、MAZDAが他の何よりも優先して守りたいと望む「欧州のクルマ文化」の中心に長く君臨し続けたのが、ジョルジョット=ジウジアーロという自動車デザイナーだ。1960年代の前半にベルトーネというイタリアの名門カロッツェリアで才覚を発揮。アルファロメオ「ジュリアスプリント」BMW「3200CS」、東洋工業(MAZDA)「ルーチェ」のスタイルがやたらと似ているのはこの男の仕業。30歳で独立する(イタルデザインを作る)までに他にも、いすゞ「117クーペ」、マセラティ「ギブリ」、フィアット「ディーノ」をデザインしてしまっている。もう二度と現れないレベルの怪物だ。
ジウジアーロと松田恒次
どこまでが本当の話かわからないけど、独立の直前にビジネスパートナーの宮川秀之に連れられて松田恒次(3代目社長)に会いにきたらしい。「今度独立しますんでよろしくお願いします」という挨拶だったのかもしれないが、初代ルーチェ以降にジウジアーロが手がけた東洋工業(MAZDA)車はない。ジウジアーロと松田恒次社長の会談の内容は明らかにされていないが、イタルデザインがこの後に欧州車のスタイルを定義し続け、MAZDAがあからさまな欧州志向を見せ続けたのは変えられない事実だ。
MAZDAの社是
東洋工業を4輪メーカーに変え、ロータリーエンジンの完成までを見届けた松田恒次社長の偉業と存在感は、MAZDA社員の著作にも度々登場している。今年は没後50年のメモリアルイヤーとなるが、社内ではその意志を継ぐことが使命だと暗示をかけて、あらゆる部署がハードワークできているとか書かれている。3代目社長の掲げた目標こそがMAZDAにとって何よりも大事であり、藤原さんも前田さんも述べているが、この辺の「社内の事情」を理解しない連中(カーメディア)には不快感しかないらしい。普段からカーメディアをバカにしているから、悪口を書かれてしまうのだろうけど・・・。
異次元のMAZDA3
欧州市場におけるMAZDA3は完全に浮いた存在だ。ゴルフ、フォーカス、シビック、アウディA3が直3の1Lターボで走り、メルセデスやBMWですら1.3や1.5L程度の小型エンジンが基本なのに、2種類の2Lガソリンエンジンだけで乗り込んでくる。乗用車まで「ロードスター」気分で作ってくる東洋のクレイジーなメーカー。ここまでトンガって来られると英国カーメディアのみならず欧州全域で認めざるを得ない。古き良き「欧州の自動車文化」を守るために頑張っていることはまぎれもない事実だ・・・。
狂気の理由
MAZDA3の伸びやかなデザインと表面の仕上げは、イソ・リヴォルタグリフォ&リヴォルタフィディアや、アルファロメオ159&ブレラといった「ボデー表面」だけでジウジアーロだとわかるあの独特の特色・主張を彷彿とさせる。単なる偶然かもしれないが、MAZDA3の開発が始まったであろう頃にジウジアーロの引退が報道された。もしかしたらジウジアーロのこれまでの幾多にもわたる「欧州自動車文化」への貢献を3代目社長に変わって大いに讃えるというのが、2015年の東京MS以来やたらと目立つようになったMAZDAのデザインコンセプトの共通のテーマなのかもしれない。
欧州メーカー奮起しろ!!
数々のジウジアーロ・デザインによって築き上げられてきた「欧州の自動車文化」の輝きを、イタルデザインに大いに支えられてきたアルファロメオやVWこそが欧州メーカーを代表して受け継ぐ必要があると思う。現行のジュリアやゴルフ8のデザインは決して悪くはないのだけど、他と一線を画すようなジウジアーロらしさが「発露」しているとまでは至っていないか・・・。もちろん新しい時代にふさわしい才能が生まれている可能性もある。ゴードン=ワーグナー(メルセデス)やローレンス=ヴァンデンアッカー(ルノー)はジウジアーロに匹敵する器になれるだろうか!?
6月に前田宣言!?
WCOTYにおける圧倒的なMAZDA支持の裏側には、欧州自動車文化の復興を、地元欧州メーカーにも期待するジェラシーみたいなものがあるのかもしれない。「贅沢なデザイン」「贅沢なエンジン」の両方を抱えるMAZDA3は、現段階では孤高の存在になっている。他社のモデルももちろん素晴らしいのだけど、やはり圧倒的なノスタルジーを醸している。6月に前田育男さんが再び本を出すらしい。MAZDAデザインの独裁者は、またまた予想外の大風呂敷を宣言するのだろう。そこに「ジウジアーロ」の名前は出ないかもしれないけど、MAZDAブランドはジウジアーロの意志を受け継いで、さらなる自動車文化の発展に寄与すべくラインナップを拡充させる!!・・・みたいな爆弾宣言が発せられることを期待している。
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↓なんて挑発的なタイトルなんだろう・・・