イライラしかしない・・・
【生き残るのはどのメーカー?】決算発表 トヨタ/ホンダ/マツダに「差」 コロナ後どう見据える | AUTOCAR https://t.co/hrV7XBM7q5
— CARDRIVEGOGO (@cardrive55) May 17, 2020
決算の読み方・・・
5年前に書いた自動車レビューの多くが、今となっては全く的外れで黒歴史でしかない(先見の明がない)カーメディアの連中が、20年3月期の各社の決算を受けてアレコレ書いている。トヨタは一昨年、昨年に引き続き2兆円以上の経常利益を出した。さすがに来年度は厳しいとの予測だけど最低ラインでも「黒字」だと断言。この堂々の立ち振る舞いを見て、「他社もトヨタをお手本にしろ!!」「長期的なビジョンを作れ!!」と誰にでも言えるレベルの呑気な結論するのが良くも悪くもカーメディア(読者の質は・・・)。他社の経営陣からしてみれば、完全に余計な御世話だ。真似できるならさっさとやっているだろ!!って話だ。
利益の意味
半世紀にわたる日本の自動車産業の発展の中で3期連続で2兆円以上の利益を上げる企業などもちろん存在しなかった。「利益」なのだからミクロ視点では素晴らしいことだし、株式市場では世界中のIT・フィンテック企業と同じ土俵で収益性を比較されちゃうトヨタとしては頭に拳銃を当てられて仕方なく過去最高益を更新し続けている側面もあるのだろう。
儲けすぎ
しかしマクロ視点では高収益とは資本主義的収奪から生まれる可能性は否定できない。経済循環を堰き止めて2兆円もの大金を強引に溜め込んでいる。少しでも下請け企業や系列販売店あるいはユーザーに還元すれば、社会全体の底上げになるのだから、MAZDA社長は2.5兆円の売り上げに対して利益1000億円は「儲けすぎ」くらいの発言をする。トヨタの社長とは歩んできた場所が違うってのはあるんだろうけど。
血液循環が・・・
トヨタの売り上げは25兆円余り。日本政府の一般会計と特別会計を合わせれば実質的には大体250兆円くらいになると言われている。トヨタと同じ利益率で20兆円余りを「利益」と称して秘匿すれば、日本経済に重大な影響を及ぼすと思われる。公共団体と営利企業は違う!!という意見もあるだろうが、昨年トヨタが発行した利回り0%社債を日銀が償還する仕組みなど、「トヨタ国民」を守るための共同体作りに勤しんでいるようだ。
利益とは「作る」もの
多くの関連企業(サプライヤー・販社)に支えられている自動車メーカーが、単独であれ連結であれ10%近い(業界水準では)高収益率を叩き出すことは過去にもあったが、それほど長期で安定したものにはならない。リーマンショック前のメルセデスやビーエム、リーマン後のスバルやポルシェなどが該当するけど、それら全てに共通することは、特段に優れたヒット車が連発した訳ではなく、生産設備の新設を見送ったり、生産コストを低減させる手法を取り入れたりして、利益を「作っている」に過ぎなかった。
スポーツカーに固定費は不要?
ここ3年のトヨタも工場の新設はほとんど行っておらず(MAZDAとの北米EV合弁だけ?)、86は群馬、スープラはオーストリアなど、新型モデルのために固定費を増やすようなことはしていない。1000万円を軽く超えるようなスーパースポーツならまだしも、量販型のスポーツカーを自社連結の工場で生産するなんて最初から考えてすらいない。世界中に手軽なスポーツカーを楽しみたいという人々がいる。そのためにはそこそこ体力があるどっかの総合自動車メーカーが、収益悪化を覚悟で生産ラインを作り固定費を上げなければいけない。
他社の努力を踏み台に・・・
MAZDAの宇品やNISSANの上三川ではなんとか「混流」という体裁をとってスポーツカーの伝統を守ろうとしている。長く自動車を販売してきたメーカーとして、ファンの期待を裏切るわけにはいかない。NISSANやMAZDAはスポーツカーに固定費をつぎ込むことで、クルマ文化の成熟に精一杯報いる・・・そんな「社会貢献」を「利益」よりも優先しているのだろう。そんな甘っちょろい考えを鼻で笑い(?)とっくの昔に捨て去っている今のトヨタが、他社を圧倒する利益を積み重ねる・・・まあ当然のことなのかもしれない。
効率化はクルマを殺す!?
ポルシェ、ジャガーを除く全ての欧州の総合自動車メーカーは、トヨタと同じく専用設計スポーツカーなど生産してはいない。固定費見直しで生産コストの低減を徹底し、ミッションなどの主要部品までアウトソーシングで作り、クルマの性能よりも単純に利益を追求してきた欧州メーカー。そのリーマン後の道程は果たして意義あるものであったと言えるだろうか!?あらゆる反省からか、メルセデスはこれまでの高収益ビジネスモデルを転換し、より魅力的な総合自動車メーカーへと進化すべく、スポーツカー専用シャシーを開発した(新型コロナでお蔵入り!?)。
ちょっとムカつく・・・
「トヨタ国民」の安定雇用と生活保証のために多額の利益を計上し、内部留保を増やすこと自体は、完全に「経済の自由」の範疇なので批判するつもりは毛頭ない。赤字に苦しみながら固定費を計上しスポーツカーを生産する他社を横目に、提携先からチョロく調達したスポーツカーを精一杯に宣伝し「日本のクルマ文化を守る!!」と宣言するのも・・・見ていてあまりいい気はしないけど、やるやらないは完全に自由だ。決して違法ではないが、そういうメーカーは応援したいと思わない。
最先端のカツアゲ世界
VWグループが北米市場での不祥事を理由に米国連邦政府などから総額で3兆円以上の罰金を課せられている。10年分くらいの利益を根こそぎ持っていかれる計算だ。支払い能力に応じて罰金額はテキトーに設定されている。米国企業は中国政府に、中国企業は連邦政府に、これからも各国政府による「カツアゲ」は世界的なトレンドになるのだろう。「トヨタ国民」の安全保障のために「みかじめ料」を払えるだけはプールしておかなければいけない。中世の荘園領主みたいな感覚なのだろうか!?
トヨタ国
トヨタの決算を見て「すごい」と思うか「ヤバい」と思うか人によって受け止め方は違うだろう。トマ=ピケティの名著によると、G7各国の平均流動資産額は20万ユーロくらい。夫婦ですぐに5000万円のキャッシュが用意できれば「普通の人」で、その6倍(夫婦で3億円のキャッシュ)あれば「富裕層」と定義されている。「普通の人」とは新型コロナが起きても10年くらい余裕で無収入で生活できるくらいの財力を持つ人だ。この経済水準に近いコロニーを目指しているのが「トヨタ国」なのかもしれない。そんな肯定的な見方もできるわけだが・・・。