GRライズ
燃費に頼らない「走り」のモデル
ダイハツプラットホームで5ナンバーSUVを調達したトヨタだけど、やはりダイハツのシャシー&ボデーは上の車格のクルマに匹敵する作り込みの良さと、車重がFFで940kg、AWDで1040kgでヤリスと同等まで抑え込まれていること。「コスパに優れるスポーツモデル」を狙うGRブランドにとっては最高の素材の一つだと思う(他のモデルにも言えるけど、もしかしたら絶賛開発中の可能性もある)。最高グレードの「Z」でも本体価格220万円なので、「安い」から売れているとか思われているけど、実際の購入者に訊いてみると「駐車場」「出足の良さ」「デザイン」などおおよそRAV4への不満からこちらを選ぶ人が多いようだ。5ナンバー車をナメている人もいるだろうけど、RAV4と同等かそれ以上の「感動」を与えているから売れる。
世界を制した実力
しかもこのクルマには、トヨタ車の最大の武器となっているHVの設定がない。ヤリス程度のベース車重であればHV化で実燃費で30km/Lくらい走れるクルマになるのだろうけど、トヨタ向けOEM車のみで2020年は12万台を越えている。月10000台平均を超えた普通車はヤリスとライズのみ。HVが設定されないモデルとしては異例の販売台数を記録した。フランスメーカー車やVW車に興味があった層にもウケている。ダイハツがここまで自信満々なモデルを作るとは思ってなかった!?という声もあるけど、メルセデス、ボルボ、ロータスを擁する吉利汽車傘下で三菱シャシーが供給されている「プロトン」を、マレーシア市場で徹底的に叩き潰した新興ブランド「プロドア」の原動力がダイハツ。ライズのような4m級はFFのDNGA、3列シートの4.5m級(アルズ、テリオスなど)にはFRが使われている。吉利汽車、VW、ステランティス、ルノー日産が注力する最激戦区で、トヨタグループの尖兵として果敢に戦果を挙げたダイハツの実力を知っている「まともな」クルマ好きなら、このクルマの素性を疑うことはないだろう。