パンドラの箱を開けたBMWのエゴ
2000年頃の自動車レビューでは、SUVなどまともに定義すらされていない。福野礼一郎著「世界自動車戦争論」で登場するのは、3代目レンジローバーとハマーH3のわずか2台だけ。この本の発売は2008年だけど、当時はX5、ランドクルーザー、ゲレンデ、カイエンはアメリカ人が好む「あっちの世界のクルマ」でしかなかったようだ。
イギリスのジャングルが併設されたランドローバーの工場で作られてきた伝統のSUVが、1994年にドイツブランドに買収され、アウトバーンを走るグランドツーリングSUVに作り変えられてしまった。それが初代X5だったようだ。その後2002年に初代カイエンが発売され、ターマックSUVが本格的に人気を得る。今ではBMWもポルシェももはやSUV無しには存続できない。
BMWに勝てるの!?
本家のランドローバーも現在では全ラインナップでラダーフレームを辞めてしまい、大雑把な言い方をすれば「ドイツ式」SUVになった。ジャングルはもう不要かもしれない。「伝統と刷新」に対する意見はいろいろとあるだろうけど、最高のクルマを作り続けてきたドイツ人のエゴが、20年経過してクルマの常識を塗り替えつつある。
とある日本メーカーが直6エンジンを搭載できる縦置きFRシャシーのSUVを発売したが、ランドローバー買収から四半世紀以上に渡ってSUVの性能向上に尽力してきたBMWの領域にすぐに辿り着けるものだろうか。2012年に横置きのSUVを発売してグローバルで大ブレークした実績こそあるけど・・・いやいやこのメーカーのようなエゴが次の時代を作っていくのだろう。