アメリカ市場の勝者
かつてアメリカの自動車産業を追い越していった日本では、アメ車に対して「燃費悪い」「壊れやすい」「車体がゆるゆる」などの偏見が、カーメディアにおいても平気でまかり通っていた。言うまでもないが、それらは用途によって設計が異なる幅広いクルマ文化の1つの側面を揶揄したものに過ぎない。実際にアメリカ市場こそが、FRのポルシェや、フェアレディZ、スープラ、WRXといったスポーツカーの需要を生み出していた。
アメリカのカーメディアでも10ベストカーの常連としてゴルフGTI、BMW・M2、シビックtypeRなど小振りなボデーでキリッとした走りをするモデルが多数選ばれている。スバルはブランド内の北米シェアが80%となって10年ほどが経過していて、新型モデルの開発も「アメリカ市場一本被り」になってきた。軽自動車もスライドドアも廃止は当然として、堅牢なボデー&シャシーも2.5L級エンジンの搭載を前提とした北米設計である。
マーケティングがアメリカっぽい
日本よりも数ヶ月前に登場している北米クロストレックは、2.5L自然吸気と2.5Lのマイルドハイブリッドが用意されている。クロストレックという新名称はコアなドライビング派にはちょっと馴染まない。全高1580mmに抑えていながら、最低地上高200mmを確保していて、整備が行き届いていない峠道を越えていく冒険的ツーリングに適したクルマだというメッセージは伝わってくる。
BRZがロードバイクならば、クロストレックはグラベルロードだといえる。ロードバイクブームで買ってはみたものの、すぐに乗らなくなった人が多かったようで、ロードバイク市場は拡大から縮小へバブルな動きがあり混乱気味だ。ミーハーなど相手にせずに、中長距離のドライブを趣味として楽しむ「実際に乗っている人」を相手にした北米らしいビジネスモデルなのだろう。