官民一体・挙国一致
ボルボの本拠地であるスウェーデンでは、2035年からの「エンジン車の新車販売禁止」が決まったEUに先駆けて、2030年から前倒しして実施するとしている。ボルボも2030年までに全モデルをBEV化すると表明しており、官民が挙党して戦略的BEV立国に取り組んでいる。EU外ではあるがイギリスでも2030年からの開始が決まっていて、やはり英国を代表するブランドのジャガーが同じタイミングでの完全BEV化を表明している。
日独伊などの「エンジン強国」では、自動車産業の方針が二転三転しており、挙国一致のBEV化戦略は、自国にとってはシェア低下&雇用削減などの逆風が予想さる。もう10年ほど前から世界的なBEV化は100年規模の時間が必要だと試算されている。スウェーデンやイギリスなどの中堅規模の自動車産業国ならばBEV全振りも戦略上可能なのかもしれないが、トヨタ、VW、フィアット(ステランティス)が支配的な国々ではいきなりの構造の転換は難しい。
売る気ならどこにも負けない
BEV全振りボルボの世界戦略車となるC40だけど、すでにベルギー、中国、マレーシア、インドの4カ国の工場で生産が始まっている。本国スウェーデンは物価や人件費が日本の2倍以上も高いわけで組立生産には不向きであり、本国には一定規模の生産工場と開発センターがあるが本国生産は縮小方向だとか。今後はさらに厳しい価格競争が予想されるBEVだからこそ将来に備えてコスト管理が徹底されている。もしかしたら物価や人件費が相対的に安くなっている日本にもサプライズの工場投下があるかもしれない。
日本のユーザーが可能な限りBEVを選んだとしたら、中国やインド生産のテスラ、ヒョンデ、ボルボが日本の既存メーカーのシェアを置き換えていくことになる。製造業の衰退は、既得権益が溢れる社会でぬくぬくと低い労働生産性のまま生きてきた日本の中枢の人々(政治家、公務員、大企業)の立場を追い詰めていく。生産性が低いと言われてきた農業より先にサラリーマンが淘汰されることになりそうだ。19世紀には先進国によって散々に奪われてきた中国やインドが逆境を跳ね返して覇権を奪いつつあるけど、時代の波ってやつだろうか。