欧州市場の難しさ
70年代以降にパラメータ至上主義で北米市場までも制圧した日本メーカーだけど、同じ手法が欧州市場では通用しなかった。プレリュード、シビックtypeR、ロードスター、ランエボ、スイスポなど高いクオリティやオリジナリティを持った日本車は売れるけども、驚異的なモード燃費とダンピングレベルの戦略価格でパラメータの鬼と化した初期のプリウスは苦戦した。
欧州の高級車ブランドを追いかけてレクサスやインフィニティが欧州でも販売されたが、ほとんど相手にされていない。ポルシェもメルセデスも経営は青息吐息でVWや吉利汽車との提携で生き永らえているに過ぎない。薄利多売の日本メーカー大手や、したたかに北米市場で支持されているスバルやMAZDAの方がよっぽど優良企業と言える。
日本メーカーがハマった沼
自動車メーカーが抱える悩みのほとんどが「構造的」な問題であり、薄利多売を止めればシェアを失う可能性は高くなる。逆にシェア拡大を狙って価格を下げればブランド価値が低下する。政治の問題と同じだ。貧富の差を縮めるために富裕層への課税を強化すれば、富裕層は海外へ脱出してしまう。富の再配分で貧富の差が平和的に縮小された成功例はないという意見もある。
日本も経験してきたことだけど、戦争や大災害によってのみ社会の歪みは是正される。欧州諸国はこの「構造的問題」の難しさを理解した上で、EVショックを人為的に発動し、自動車産業に「戦争・大災害」に匹敵するものを起こそうとしている。VWやステランティスにも相当なハードランディングを強いるとは思うが、巨大資本化により自動車産業全体の不活性は顕著であり、必要な処置だと言えなくもない。