日本市場の現実
「中流リタイア世代向け」と書くと、なんだかニッチなジャンルに感じるが、日本メーカー、ドイツメーカーの日本向けモデルのほとんどが、この市場を強く意識して開発されている。トヨタだと「ハリアー」「RAV4」「クラウンクロスオーバー」「カローラクロス」「C-HR」「ヤリスクロス」などSUVモデルのメインユーザーの年齢層はかなり高いらしい。
MAZDAも「MAZDA2」「MAZDA3」「MAZDA6」「CX-3」「CX-30」「CX-5」「CX-60」「ロードスター」が、高齢者ユーザーを意識したグレード構成に変わっている。しかし高齢者の世代からはあまり良い印象を持たれていないメーカーでもあり、むやみやたらと価格を上げずに、上位グレードモデルでも300万円くらいから買うことができる。ブランドのほぼ全モデルが「中流リアタイア世代向けモデル」といえる。
レクサスの存在意義
「上流リタイア世代向け」の定番ブランドといえばレクサスだろうか。「トヨタと中身は同じ」という都市伝説がずっとあるけど、LSもISもCTもトヨタブランドの同クラス車と比べれば乗り味や質感ははっきりと異なる。長年クルマに乗ってきたベテランユーザーならではだけど、トヨタ車の完成度に不満を持ち、あれこれ改良して乗りたいという願望を持っているユーザーにとっては、好き嫌いこそあるだろうけどレクサスという「コンプリートカー・ブランド」の存在は有意義だと思われる。
マークXが消え、カムリも消え、トヨタブランドの3BOXカー・ラインナップが崩壊した。構造的な問題だろうか。日本市場でこだわってセダンを選ぶ人は、かなりのクルマ好きであり、彼らの選択肢に入るためには、少なくともドイツのスポーツセダンと比べて互角以上に走れることが求められてしまう。日本メーカーのDセグではレクサスIS、スカイライン、アコード、MAZDA6、WRX・S4の僅か5台だけが生き残った。いずれもドイツ車を相手にしても高く評価できるモデルばかりだ。