豊田章男さんが誇ったクルマ
レクサスRCは、ISから派生した2ドアクーペだ。481psまでスープアップされたV8自然吸気に負けない堅牢なボデーを作るという明確な開発コンセプトから生まれた。日本メーカーが「世界最高峰」のグランドツアラーを作るという野心的な試みは、当然ながら日本の道路環境ではオーバースペックでハイエンドな存在なのだけど、豊田章男社長を崇拝することが生き甲斐にまでなっている幸せな「規格外」マニアにとって、RC-Fはオンリーワンな存在だろう。
このクルマの凄いところは、メルセデスやBMWが心血を注ぎ込むドイツのGTカー市場と、ダッジやシボレーがアメリカ車のプライドを懸けて作り続けるマッスルカー市場のどちらの「改造乗用車市場」において大いに存在感を発揮していることだ。日本代表チームが、サッカーW杯で欧州の強豪国を、WBCでアメリカを倒したが、そんな世界レベルの活躍に熱狂する国民性(私も非常に感銘を受けた)に通じるところがある。
セダン&クーペの必然性
3.5L自然吸気、2.5L&THS、2.0LターボのRCの普及モデルは、希代の名車RC-Fの「レプリカ」的な意義もあり、所有を楽しめる要素が多い。この3つのユニットの中で最も出力がある3.5L自然吸気はトヨタ伝統のジェントルな高級車ユニットで、4ドアのレクサスISでもエンジンパワーで車体がブルブル震えたりする「シャシー負け」は全くと言っていいほど感じない。
セダンあるいはクーペボデーのRWD車は、依然としてクルマの王道と位置付けられている。乗用車のボデーで300km/hオーバーで走れるのはおそらくセダンとクーペだけだろう。桁違いのエンジンスペックであっても、タイヤの性能としっかりコストを掛けて高められたシャフト剛性でシャシー性能を底上げし、過激な出力をあっさりと抑え込んでしまう。FFベースで車高が高いSUVやミニバンでは、チューナーが手掛けるコンプリートカーであってもここまで上手くはできないだろう。