イタリアが認めた!?
アメリカ(GM)、ドイツ(ポルシェ)、イギリス(ジャガー)の名門を相手に堂々たる日本代表である。しかし日本のクルマ好きやカーメディアの多くはこの奇跡的な事実を認知していない。半世紀に渡って積み上げてきた伝統の重みを知るのはMAZDAとそのファンだけかもしれない。ポルシェが次期型911を発表するのと同じように、出るべくして出てきた「ICONIC・SP」だったと思う。
北米ビッグ3の1つクライスラーの歴史には2人のイタリア系のカリスマ経営者が出てくる。リー・アイアコッカは日本車を徹底的に毛嫌いしたが、セルジオ・マルキオンネは、フィアット=クライスラーのCEOとしてMAZDAロードスターのOEMを決断した。アルファロメオの1750エンジンをMAZDAのシャシーに縦置きするというマニア向け企画が念頭にあったようだが、その組み合わせはラリー向けモデル「124R-GT」のみに終わった。そしてブランド名もアバルトになった。イタリア製を絶対とするアルファロメオは、広島製を認めなかった。
毀誉褒貶
何の確証もないけども、スポーツカーの本場と言えるイタリア系カナダ人のCEOは、50年に渡ってスポーツカーを作り続けてきた日本メーカーの偉業に敬意を示して企画を持ち込んだのだと思う。アルファロメオをFR車のブランドとして再生させたのもこの人だ。イタリア生粋の老舗ブランドにあらゆる話題性を集めて強烈に世界にアピールしたかったのだろう。伝統は尊重されるべきだとは思うが、1750を搭載したロードスターをアルファロメオブランドで見たかった。
そんなMAZDAに対しては様々な意見がある。今月に発売された「福野礼一郎のクルマ論評8」に掲載されているCX-60のレビューでは、「志高くすがすがしい広島型ドイツ車もどき」という志が低くて不機嫌さシニカルさだけを曝け出している副題が添えられていた。還暦を超えた経験豊富で素晴らしい教養を持つ最高レベルの自動車ライターが2023年に描いたレビューが、MAZDAの世界的な立ち位置は「後発パクリメーカー」でしかないとは残念ではある。