新しい高級車像
300万円台でかなり万能なホンダ・ヴェゼルが買えるのに(納期の問題は別として)、もっと高価格で贅沢なクルマを志向してハリアー、ZR-V、エクストレイルを選ぶのだから、立派に「高級車」の需要を満たしていると言える。商売上手な大手メーカーだからしっかりと心得ていて、ヴェゼルやカローラクロスと比べて、インテリアの各部の質感が良く、クルマのサイズ感もゆったりとしていて、素人にもハッキリとレベルの違いがわかるように作り分けている。
確かに「高級車といえばセダン」という価値観は今も残っている。スカイラインやアコードの乗り味には、エクストレイルやZR-Vでは十分に再現できないフラットでありながらも上質な絨毯の上を走るような極上の心地よさがある。SUVでは210mmくらいある最低地上高がセダンでは140mmくらいに抑えられ、全高もSUVでは1700mm前後だけど、セダンでは1450mm以下だ。このサイズによって発進・停止・中高速での旋回などの動的質感に決定的に違いが生まれる。
昭和に戻った!?
その一方で、SUVの方が床が70mm、ルーフが250mmそれぞれ高いため、車内の頭上空間はかなり広々としていて、ロングドライブの際に乗車姿勢が柔軟に選べる。家のリビングは広い方がいいのと同じで、広々とした車内でくつろいだ移動時間を過ごせるのが、今時の高級車の価値を作り上げている。同じくキャビンが大きいミニバンだと、3列シートのレイアウトによって運転席は狭くなり、車両の前方にオフセットする。ドライバー目線で恐縮だけど、車両中央に座れる2列のSUVの快適さは優れている。
クルマ好きで詳しい人にとっては、セダンの良さ、SUVの良さはそれぞれ別個に存在していて、好みで選ぶべきものではある。どんなボデータイプであっても、他の大衆モデルの自動車ユーザーから憧れの眼差しを向けられるクルマというのが「高級車」とされる不可欠な条件だと思う。C-HRやカローラクロスでちょっと窮屈だと感じているしているユーザーが、ハリアーに憧れるというヒエラルキーの構図は昔も今もあまり変わらない。