時代の転換点
2020年代となり、日産もトヨタもホンダもスーパースポーツの開発を中断している。中国の不動産バブルも潮目が変わってきたようだ。スーパースポーツもタワマンも「非日常で素晴らしい景色」を見させてくれるものだけど、その反面で何かと不便なことも容易に想像できる。潮目が変われば反動的な価値観が生まれる。タワマンよりも平屋がいいし、GT-Rより、ゆったり乗れるエクストレイルがいいという声も大きくなる。
日産が「脱GT-R」のブランディングを掲げて作り込んだ高級BEVの「アリア」の反響は限定的だった。バッテリーの供給など経営上の問題も足枷になったようだけど、それを補完すべく汎用SUVだったエクストレイルを高級車仕様に仕上げてきた。セルフ見積してみたところe-4orceとナビの最小限のオプションで乗り出し価格は450万円となった。世帯年収1000万円(東京で子育てする最低ラインらしい)くらいなら、ファミリーカーとしてちょうどいい価格だ。
オールド・ユーザーは切捨?
商用車の需要はほぼ無さそうな現行エクストレイルが2024年になって、昨年比1.5倍で順調に売れている。ゆったりしたドライブ空間と、BEVと同等の加速性能を持つe-4orceが搭載されているのだから、満足度は非常に高い。2000年頃には200万円くらい、2010年代のSUV全盛期には250万円くらいだったエクストレイルという車名が同じのまま400万円以上になったことに抵抗感はあるとは思うが・・・。
「クルマ離れ」の期間を挟んでいたこともあって、新しくクルマに興味を持つユーザーにはかつてのエクストレイル像は意に介さないかもしれない。ザ・クラッシュの「I fought the law」がCMソングとして流れていたのを覚えている。元々はオリジナル・パンク世代(1960年代生まれ)がターゲットのクルマだった。車名を変えないのは、上の世代が敬遠することで、逆に若い世代を呼び込もうという高度なマーケティング戦略なのかもしれない。