日本向けデチューン仕様
ZR-Vに蹴散らされたRAV4やCX-5にも言い分はある。北米市場スペックは狭い日本ではオーバースペックであり、公道をサーキット代わりにする反社会的なカーライフは決して許容されない。車体価格を抑えるために車体や装備と、スペックのどちらを妥協すべきで、燃費重視の風潮を考えると、真っ当なマーケティングであり、この「曖昧」くらいがちょうど良い塩梅な部分もある。
ブランドの上位モデルが売れることは業界にとっても良いことだったのだが、ZR-Vがギリギリ200万円台の戦略価格で参入してきたことで、全てがおかしくなってしまった。ベース車のシビックよりも安いというイレギュラーな価格設定に、このクルマの戦略的役割が反映されている。
ホンダさえいなければ・・・
20年ほど前に1.6〜1.8LのMAZDAロードスターの人気を受けて、2.2LのVテック280psで仕上げられたS2000が投入されて、気軽にスポーツカーを楽しむ空気は一気に萎んでいった。ロードスターで気楽なスポーツカーライフを楽しむユーザー層に対して、ホンダもカーメディアも一部のユーザーも声を揃えて「遅すぎてスポーツカーでもない!!」といった恫喝をした。ZR-Vが、CX-5やRAV4のスペックを計算した上で後から登場したことで、S2000と同じような構図になりつつある。
S2000やZR-Vが存在しなければ、クルマ好きは人々は特段に懸念もなくロードスターやCX-5を納得して買うだろうが、彼らの意識を揺さぶるだけのスペック上のアドバンテージがあると、不必要な迷いが生じる。パワー不足を感じてしまうロードスターだったり、腰高設計ゆえに限界領域でのコーナーリングでは車体上部の振れが気になるCX-5の弱点をよく分析した「後追い」モデルになっている点は十分に伝わっている。