大企業の病理
エンジンスペックを低く抑えたエコなクルマこそが一般的な日本車のイメージであり、そのスタイルが広く世界中のメーカーに浸透していった。しかし半世紀に渡る成長を遂げて売上で数兆円から数十兆円規模になった日本メーカーのマーケティングは狡猾に変化した。生産拠点の増設などの設備投資による成長ではなく、台数を増やすことなく1台当たりの利益率を上げる方法で売上&利益を伸ばしている。
半導体などの分野で多く見られるファブレス化が自動車業界にも波及していて、タイやインドから国内市場にキックス、WR-V、CX-3など低価格の普通車が逆輸入されている。年間400万台を海外生産で賄うのは現実的ではないので、今後も国内生産は残り続けるだろうが、新規メーカーの参入は全くないので、わざわざ「安くて良いクルマ」を作るバイアスは弱まっている。
分断のラインナップ
日産と同じグループを形成するルノーも日本市場向けに低価格(200万円台)のトゥインゴ、ルーテシアを配置し、上位モデルのメガーヌは500万円超のルノースポールだけという割り切った設定になっている。中間価格帯(300〜400万円台)のファミリーカーとしてカングー、キャプチャー、アルカナが導入されていて、負担感は日本車とあまり変わらない。
スカイラインは古い設計ではあるものの、500万円以上の価格を納得させるだけのスペックが備わっている。800万円ほどするスカイラインNISMOでも購入希望者が殺到するのだから、日産のラインナップにおいて極めて貴重な存在だ。高級BEVとして発売されたアリアもバッテリー容量の多いB9は700万円以上の価格で売れたが、これはEV補助金ありきの価格設定であり実質は600万円を下回る価格の負担に留まる。