レクサスの失速
レクサスLSとは違う方向で開発されたレクサスGS(トヨタ・アリスト)は初代は直6、2代目、3代目はV8自然吸気の搭載グレードもあり一定の需要を得ていた。新型シャシーで臨んだ4代目だったが、2011年の発表時に「退屈過ぎる」との酷評を浴び、2012年のデビュー時には、THSを使った新型のパワートレーンが北米市場ではやや貧弱だったこともあり販売が一気に落ち込んだ。
4代目(最終世代)のレクサスGSは、ドイツのプレミアムカーに負けない新設計シャシーを投入して、新世代のレクサスの船出を象徴する存在であった。しかしドイツのプレミアムブランドのように「ネームバリュー」だけで売れる前提の、コンサバ路線のクルマ作りが、完全に裏目に出てしまった。「レクサスは何を勘違いしているのか?」そんな冷たい市場の反応は、その数年前の北米で巻き起こった「トヨタバッシング」の悪夢をひきづっている部分もあっただろう。
高級車市場が活性化
リーマンショックからの回復と、GAFAMが牽引するITバブルによって、北米の高級車市場は活性化し、さらに市場開放が進んだ中国経済の成長により需要がどんどん増える。ブランド存続が危ぶまれたマセラティ、アストンマーティンは力強く新型モデルを開発する。フェラーリとランボルギーニで飽和したと思われていたスーパーカー市場にマクラーレン、TVR、ダラーラ、ピュリタリア、ピニンファリーナなど新興ブランドの参入が止まらない状況だ。
VW傘下のブガッティもヴェイロンに続くシロン(2016年)を発売。ホンダは二代目NSXを、GMもコルベットをミドシップのスーパーカーにして新たなブランディングを目指した。ホンダはセル生産を使ってでもハイエンドスポーツカーを作ってしまう破天荒なメーカーであるが、堅実なトヨタやその経営を真似する他の日本メーカーや韓国メーカーの動きはかなり慎重だった。ライン生産でハイエンドなスーパーカーに伍する性能のクルマを生み出すのは至難の技だ。