トヨタだけどトヨタじゃない
ライン生産ボデーと手組みエンジンを組み合わせた日産GT-Rのような手法もあるだろうけど、ジェントルかつ力強い2UR-FSEエンジン(5L・V8)で、トヨタらしい「80点主義」な設計基準に立っている。しかし内外装はなかなかにアバンギャルドで非日常な雰囲気を放ち、デビュー当初のプロライターの提灯レビューでは、アストンマーティンの半額(1500万円)で、同等のスペックなのだから競争力は非常に高いと書かれていた。まあそりゃそうだ。
「同等のスペックで半額」というユーザーを刺激するインセンティブを否定する気は全くない。初代セルシオ(Sクラスの半額)、初代NSX(フェラーリ348の半額)、R35GT-R(997ターボの半額)の他にも、RX7、フェアレディZ、スカイライン400R、CX-60などなど、名門の輸入ブランドのモデルを唯一のターゲットとして開発されてきた日本メーカー車は名車揃いで、半額でもターゲットの輸入モデルにはない「オリジナルな魅力」をしっかり考えて作り込まれている。
日本や欧州ではクルマ離れ
フェラーリ、ポルシェ、メルセデスと「同等のスペック」が出せるエンジン技術があったから、それらの日本車は欧州や北米でもその存在を知らしめることになった。しかし世界と闘うカタルシスが通用するのは2001年より前に発売されたモデルに限定される。20年くらい前にはすでに欧州の高級ブランドは市場の変化に耐えきれす、地元の欧州市場での販売を減らし続けている。日本市場と同じくフランス、ドイツ、イギリスでも「クルマ離れ=自動車販売の縮小」は起きている。
2000年頃には、中長期的な欧州市場の推移(貧乏になる)を見越して、日本の軽自動車技術を欧州ブランドが奪い合った。二大資本であるダイムラーは三菱、VWはスズキを一時期傘下に収めた。しかし国内生産維持を掲げるEUでは、衝突安全基準を厳格するなどして、軽自動車のようなサイズのクルマの導入を阻んだ。日本導入時に「黒船」とカーメディアが騒いだVWのUP!も2020年に日本でラインナップ落ちし、2023年には生産が完全終了している。