高級車の好ましからぬ変化
2001年以降の自動車産業は、ITバブルのアメリカ市場と、WTO加盟で大きな転機を迎えた中国市場が完全に主軸となった。ロレックスの時計やサントリーのウイスキーが中国人富裕層の「便利品」となって、ハイパーインフレを起こしている。これらの商品は、中国ではごくごく一般的にビジネス用の「贈答品=賄賂」に使われる。自民党の裏金みたいなものだ。
中国人富裕層が好むから、高級セダンはことごとく「胴長」になり、大都市から離れれば、でこぼこな道路事情からランフラットタイヤが普及し、最低地上高のSUVが増える。そして過密な大都市でクルマが激増した結果、大気汚染が深刻となり、まあ当然の施作だとは思うが、BEV以外はナンバープレートが取りにくくなるといったBEVシフトが起こる。すでに軸足を欧州から中国に移しているメルセデスやポルシェが全面BEV化を掲げるのも当然の成り行きだ。
なぜトヨタはBEVを避けるのか?
2019年の段階でレクサスも完全BEV化を表明しているが、なぜか2024年現在もBEV専用車はほとんどない。メルセデスやポルシェが中国市場ファーストで新型BEVを次々と出す中で、足取りの重いトヨタ&レクサスの対応を一般メディアが「周回遅れ」とアジる。そして「トヨタ擁護派」と「BEV推進派」による的外れで不毛な議論が延々とネット上で続いている。
トヨタは習近平を恐れている。2013年に国家主席になると、2014年、2015年に相次いでトヨタの2つの合弁先である広州汽車と第一汽車に対して強権を発動した。広州トヨタのトップと第一汽車の幹部が贈収賄で逮捕されている。日本政府なら自民党への企業献金でいくらでも転がすことができるが、習近平に対してはあまり有効な手段はないようだ。鄧小平や江沢民と蜜月を築いていたトヨタにとっては完全なる逆風が吹いている。