トヨタの決意
中国の大都市部だけでなく、アメリカの西海岸、東海岸、西欧、シンガポール、ソウル、東京、大阪など富裕層が住む地区ではなんらかのBEV推進政策は不可避なので、レクサスやホンダのBEV完全移行の方針は理解できる。LCはレクサスのイメージリーダーを務めたV8自然吸気の最後を飾る「花火」となるようだけど、前述のように北米市場でのイメージ低下と、習近平のトヨタ恫喝を受けて、孤立無援のトヨタが背水の陣で作った傑作グランドツアラーだと言える。
2012年頃にシフト、アクセル、ブレーキのフィーリング作りで完全にMAZDAに馬鹿にされた技術的な意味での「負け犬」が、プライドを捨ててMAZDAからのフィードバックを全面的に吸収した。2017年にはMAZDAとのアライアンスが発表され、豊田章男社長は「今後はMAZDAに学んでもっと良いクルマを作る」という緊張緩和の一言を述べた。この年からTNGAが次々と登場し、完成度の高い高級車向けTHS用シフト(マルチステージハイブリッド)が登場した。
レクサスがオンリーワンになる
3000万円くらいするアストンマーティンのDB11の「半額モデル」というマーケティングに思えたレクサスLCだけども、その誕生前夜のトヨタとレクサスが置かれた過酷な状況を考えると、イギリスの名門ブランドのシェアを奪うなんて全く考えていないことがわかる。DB11は2023年にDB12になったが、こんなラグジュアリーなクルマでナイトドライブを楽しみたい・・・そんな願いを現社長の佐藤恒治さんが主催として具現化した。非常に優秀な仕事だと思う。
トヨタかレクサスのクルマを買うならば、まあ予算や用途にもよるけども、今の所はレクサスLC以外にピンと来るクルマは見当たらない。クラウンスポーツやGRヤリスに憧れる人を否定はしないけども、別に速く走りたい訳ではない。沢村慎太朗さんが著書でレクサスLCをケチョンケチョンに書いていたが、フェラーリなどのイタリアンスーパーカーを至高とする人々にはちょっと方向性は違うのかもしれない。しかしそれこそがレクサスの真価だと断言したい。