貨物車への偏見
地域密着のMAZDAは、長らくボンゴ・バンやボンゴ・トラックを自社開発の貨物車として販売していた。今も貨物車の需要はあるようで、2018年までは日産のADのOEMをファミリアバンとして販売し、2018年からはトヨタ・プロボックスのOEMに置き換わった。そしてボンゴ・バンも2020年に自社開発を終了し、ダイハツのグランマックス(インドネシア製)のOEMに変わったが、まさかのダイハツの不正問題が飛び火して型式指定取り消しの処分を受けた。
ダイハツ不正発覚に巻き込まれたのはあくまで結果論で、2020年のボンゴ・バンOEM化は、経営リソースに限りがあるMAZDAの判断なのだから批判するつもりはない。しかし欧州志向を堂々と宣言してきたMAZDAにとっては、ボンゴ・バンの開発を止めた2020年頃に、プジョー・リフターという貨物車ベースのピープルムーバーが日本市場でも人気になっているのはやや皮肉な展開だった。
欧州車への誤解
ツール・ド・フランスの沿道には、ボンゴカーゴみたいなかなり旧式の小型ピープルムーバーが目立つ。一方でMAZDA3のようなスタイリッシュなロードカーは少ない。こんな雑然とした現場にはちょっと似合わない。MAZDA3のイメージに重なるメルセデスやアウディなども、近年は欧州市場では販売を大きく減らしていて、アジア市場がメインになっている。MAZDA3が欧州車っぽいという意見は、日本国内しか知らない人々の妄想に過ぎないのかもしれない。
MAZDAは非欧州ブランドでは珍しく欧州市場でデザインが高く評価されている。欧州っぽいデザインのアジアメーカーはたくさんあるけども、その中でMAZDAが評価されるのは、長らく停滞する欧州デザインに対して、MAZDAのデザイナー陣による「こんなデザインの欧州車が生まれて欲しい」というクリエイティブでエゴな部分が実直に評価されているのだと思う。MAZDA3などのデザインは実際の欧州メーカーの現実を突き抜けた向こう側(理想)に位置している。