VWの欧州占領政策
アウディA4が短いサイクルでFMCを繰り返した背景は色々と複雑だ。VWグループ全体で運用するという意味合いが強いようだ。FMCで不要となった生産ラインをVWグループの一般ブランドへノックダウンする。実際に初代A4の使わなくなった生産ラインを利用してVWパサートやシュコダ・スパーブが、三代目A4のシャシーも、同じくVWグループのセアト・エクセオへと受け継がれた。
VWのノックダウン戦略で、PSA、フィアット、欧州フォード、オペルのDセグセダンはアウディA4のクオリティを持つモデルと対峙することになった。SUVブームでセダン全体の販売も低迷し、欧州市場における他社のミドルセダンは2010年以降に壊滅的状況に追い込まれた。欧州専用設計&現地生産のトヨタ・アベンシスは2018年に終焉し、北米生産のカムリが充当されるようになり、ホンダもアコードの欧州向けボデーを廃止した。2012年に登場したMAZDAアテンザ(MAZDA6)も、セダンは北米、中国市場向けの設計となった。
激動の時代を駆け抜ける
VWグループに対抗する、ブランド群を誇ったフォードグループも2008年のリーマンショックを契機に解体し、設計を共有していたジャガー、ボルボ、MAZDAのグループ離脱により、4代目モンデオは欧州生産(スペイン)こそ維持されたが、設計は北米向けフュージョンと同じサイズに大型化された。結局2022年にはモンデオの欧州生産は終了した。VW、アウディ、シュコダ、セアトの連合は急成長する中国市場でも高いシェアを取り、潤沢な開発資金が流入したため、他社が対抗するのは難しい状況になった。
アウディの前身の「ホルヒ」が創業した場所はザクセン州で冷戦時代は東ドイツ領になった。同じく東ドイツ出身のアンジェラ=メルケルは16年もの長期政権を維持したが、それは足繁く習近平の元に通い、中国とドイツの蜜月を築いたことが高く評価されたからだ。中国市場においては長らくVWが全ブランドで、アウディがプレミアムブランドでそれぞれトップの座を占めている。一方でアウディによって欧州から締め出されたメルセデスやBMWは北米を目指した。