ドイツの美点
イタリアの古豪ブランド・マセラティの華麗なる復活に対して、ドイツ人が作るポルシェは、イタリアの同等のブランドよりも明確に高性能で付加価値の高いものでなければならないという「ジレンマ」に陥ったようだ。992後期の発表の遅れは、概ねハイブリッド化によるものとされているが、おそらくは絶対に負けを認めないドイツのプライドを拗らせた結果、新設計のハイブリッドのエンジンに800ps超えのサーキット版を無理やり追加したことも理由なのだろう。
2010年代にはVW陣営とトヨタ陣営が世界を覆うと予測されていて、アメリカ、イギリス、フランス、イタリアなどのメーカーは衰退の一途を辿っていた。特にプレミアムブランドではその傾向は一層に強かったが、マセラティもアルファロメオも元気に新型車を発売している。2017年に発売されたアルファロメオ・ジュリアは、いつまで日本での正規販売が続くだろうか?といく末が心配されたが、福野礼一郎さんが愛車にするなど評価も高く、街中でもチラホラ見かける。
マイルド化するMAZDA
日本車もドイツ車も大雑把に言ってしまえば「ダサい」。軽自動車やミニバンは交通インフラを支えるモビリティなので、どんなデザインでも構わない。しかし個人所有向けのプレミアムな乗用車に関して、日本メーカー(トヨタ、ホンダ、MAZDA、レクサス、スバルなど)もドイツメーカーも総じて「ダサい」。デザインもマイルドであるし、MAZDAやアウディにしても「官能的」とはならない。
MAZDAが好きで、トヨタが嫌いという人の感性だと、MAZDAは「愛せるダサさ」で、トヨタは「受け入れられないダサさ」くらいの違いでしかない。まあ大きな違いではあるけど。MAZDA車は好きだ。ドライビング環境が整備されていて、受動安全性も高く、デザインにも満足できる。しかし「カッコいい」という曖昧な基準でMAZDAを評価したことはない。「カッコいい」とは、マセラティ・グラントゥーリズモみたいな、贅沢を表現したデザインへ送られる賛辞だと思う。