しのぎを削る市場がクルマを育てる
高級セダンは年齢層高めで、高級SUVは若者向けという傾向は見られるかもしれないが、だからといってセダンは時代遅れと決めつけるのは思考停止だ。高級セダンでシェアを獲得しているブランドが、長らく高級車ユーザーを独占してきたが、新たに台頭してきた高級SUVで勝負するブランドがそのシェアに挑むという素晴らしい構図ができている。
日本の街中で高級セダンといえば前述の「LS」「Sクラス」「7シリーズ」をよく見かける。レクサス、メルセデス、BMWの3ブランドは、価格設定を見てもSUVではなくセダンこそがフラッグシップであると主張している。それに対して、現在の日本市場において、「高級車の新旧交代」を目指す高級SUV陣営では「ディフェンダー110」「CX-80」「グランドチェロキー」の3台が、セダンから高級車のメインストリームを奪うべく新しい世界観を作りあげている。
実用的な高級車価格
ポルシェ・カイエン、メルセデスGクラス、レクサスLMなどの高級SUVは、人気を背景に最新モデルではハイエンドブランドのような価格設定になっている。新車乗り出しの予算が2000万円ほど必要だ。SNSで目立つための予算が青天井の金銭感覚がおかしい人々は、この手のクルマを必要とするのだろうけど、注目度を集めるためのクルマは、5年以上の長いスパンでの所有には向かない。
価格だけでなく、カイエン、Gクラス、LMの3台は設計面でも、本物の「高級SUV」とはいえないかもしれない。ディフェンダー110、CX-80、グランドチェローキーの3台のホイールベースは、LS、Sクラス、7シリーズなどの特大級サルーンと同じで3mを超えている。サスのストローク長が確保しやすいので、オイル漏れなどのトラブルも防ぎつつ、乗り味を調整しやすいSUVの最大の泣き所がピッチングであるが、これをホイールベース拡張で対応して、高級車に仕立てようという方針だ。