A3とA6
アウディ・ブランドで目立つのは華やかな上位モデルである。しかしアウディの中でも重要なモデルが、北米、欧州、日本と市場を選ばずに導入可能で、幅広いユーザーが獲得でき、前述の通り福野礼一郎さんも絶賛したA3だ。VWベースのシャシーを使っているとはいえ、最上位のスポーツグレードRS3には、アウディ専用の2.5L直5ターボ(400ps)が搭載され続けるなど、ブランドの基幹モデルとして積極的にテコ入れが行われ大事に扱われている。
アウディの代名詞である「RS6アバント・パフォーマンス」は、4LのV8ターボ&マイルドハイブリッド(630ps)で、最大市場の北米で根強い支持を受けるスペックのユニットが搭載されている(日本にも導入・右ハンドルもある)。ベースグレードの「A6」も北米に合わせたサイズになっていて、中国市場専用で公用車にも使われるという「A4L」と完全に作り分けをしている。しかし「A6」では欧州や日本の道路では大き過ぎて敬遠するユーザーに向けて、ジャストサイズの「A3」をCセグ最高峰に作りこみ、ストレスないカーライフを提供する。
A3とA6の中間には、A4とA5が統合された「新A5」が2024年に発表され、販売が開始されているが、現状ではRS5は用意されていない。先代まで存在した2.9LのV6ターボ(450ps)は、欧州排ガス規制の影響や、V8好きな北米ではV6のエクストリームスポーツの商品力が疑問、そして以前のアウディが2025年以降のエンジン車の新型モデルを廃止する方針だったことが理由かもしれないが、デビュー当初から必ず配置されていたRSが欠番になっている。まもなく登場する新型RS6の販売が一巡してからRS5が追加される戦略かもしれない。
横置き400ps(直5T)のRS3と、縦置き450ps(V6T)のRS5を比較すると、トラクションや車重でRS3にアドバンテージがある。アウディ「クワトロ」の系譜を受け継ぐ縦置きAWDも、肝心のAWD技術が10年ほど前からサプライヤー(日立)のものを使っていることが知られていて、縦と横でこだわる人はメルセデスやBMWより少ない。逆に三菱ランエボが築いてきた欧州市場での横置きAWDターボの人気を受け継ぐ格好で、メルセデスA45AMGや、RS3が人気になる一方で、縦置きはV8以上の大排気量や、RWDスポーツカー向けのシャシーに限定されつつある。