『ちょうどいいけど、やっぱり小さいかも』『十分に速い、けどもっと刺激があってもいい』『安いとは思うけど、やっぱり高い(価格)』なんだかクルマ好きの煩悩をあっけらかんと投影してしまうくらいに、欲望むき出しの際どいクルマがBMW・M2です。『夢中になる瞬間』と『現実を省みる瞬間』が交差する悩ましい存在という意味では、私たちはこのクルマにポルシェのスポーツカーと同等の価値を感じているんですねー。
『ポルシェのスポーツカー』が意味する価値とは何か? ちょっとかしこまって表現すると、ポルシェという『妥協』を許さないメーカーが、余すところなくギミックを放り込んで設計したスポーツカーを所有して操ることを喜びとする。そこに『カーライフの本懐』が今もありがたく保たれている事実に感謝する。圧倒的に日本車優位な状況においても、ポルシェはブレーキング、エンジン回転、耐久性も含めて他のメーカーに決して譲らないポリシーを守っています。つまりこのブランドには、「日産、ホンダ、マツダの方がいいに決まっているよ!!」が一切通用しないです。これはとても素晴らしいことです。
2000年代になって、新しいエンジニアリングによるタイトなスポーツモデルがたくさん生まれました。アウディTT、フェアレディZ、プジョー RCZ、A45AMG、アルファ4C、86/BRZなどなど。その中でもポルシェ・ケイマン(現718ケイマン)のストイックで嫌味のない設計は抜群で、これら一連のカフェレーサー的な小市民スポーツカーのリーダー的な存在になりました。2005年に登場したケイマンに遅れること3年。BMWが「打倒ケイマン」を掲げて投入したのがE82系の135i。BMWの狙い通りに本格的な『走り』のモデルとして、ケイマンとコアなユーザーを分け合う人気モデルになりました。
その後リーマンショックもなんのその、2シリーズクーペとして新たしいグレードを形成しますが、これがBMW・M2のベースモデルです。ケイマンも2シリーズクーペも揃って2世代目となって、ますます盛り上がりを見せるかと思ったのですが、どちらもブランドの入門モデルという位置付けからか、どちらもやや『出オチ』感があって、キープコンセプトな2代目にそれほど注目が集まらないです。他のモデルも例外ではなく、初代が社会現象なほどに大ヒットしたアウディTTの3代目に何ら感傷的になりませんし(現行モデルで終焉するでしょう)、Z33がセンセーショナルだったフェアレディZもZ34になって勢いが完全に失速。RCZに至っては2代目に望みなし・・・という判断で廃止。A45AMGが次期Aクラスで発売されても・・・微妙ですよね。
スポーツモデルを何世代も作り続ける時に最も大事なことは、常に話題を提供できるだけの「仕掛け」なんですかねー。ポルシェ911、コルベット、ロードスター。この3シリーズだけが、モデル名そのままに20年以上作られ続けていますが、これは異例中の異例といっていいです。BMWの2シリーズクーペも、『M2』というハイスペックモデルのインパクトでなんとか命脈を保っていますが、718ケイマン共々次はあるのか!?が若干気になります。
『E30・M3』の生まれ変わり!!みたいなプロモーションもされていますが、BMWがこのモデルだけ売れればそれでいいと思うなら、「リバイバル」な演出でも結構ですけども、これから永く販売を継続するモデルとして『定番化』を真剣に考えているならば・・・まあこればっかりは大変なことなんで、いかにBMWといえども無理なものは無理かもしれません。まずはお手並み拝見・・・いやいや映像で見せられると迫力満点で、このクルマ欲しくなるなー。