トヨタ究極の増税対策
トヨタの「KINTO」とかいう定額サービスが今後のさらなる普及を予感させる。クルマに必要な現実的なコストをハッキリと提示することで、クルマ所有アレルギーを解消したいという狙いは非常に上手い。若い世代のサラリーマン所得は上昇傾向なので、国内市場の潜在的需要を呼び起こすことを狙っているのだろう。しかもトヨタのように国内でもある程度まとまった数が販売できるメーカーに圧倒的に有利だ。やはりトヨタはタイミングを外さない。
定額制はクルマ作りを変えてしまう!?
消費増税による国内販売停滞は待った無しの状況であり、もしこの「KINTO」が日本の自動車購入の典型的なスタイルに定着してしまうと、どこのメーカーもトヨタの「定額」から逆算するクルマ作り(コスト管理が行き届いている素晴らしい戦略)を真似するのだろうか!? 「自分のマシン」という尊厳を愛車に持っていたい人にとってはなんだか複雑な制度でもある。すでにオリックスなどがリース商品として販売しているけども、多くのユーザーがポルシェやGT-Rすらも「KINTO」で所有する時代がすぐにやってくるのだろうか!?
スッキリしない日常・・・
クルマの「存在意義」がどんどん不明確になってきた。どこからが「クルマ趣味」といっていいのやら、「クルマが好きです」とネット以外で言い放つ自信がだんだんなくなってくる。「高額なクルマ」にはユーザーを納得させるこだわりのポイントがあるのだから、文句なしでエンスーであるし趣味性は高い。しかし新車の本体価格が1000万円を超える日本メーカー車はトヨタ、レクサス、日産、ホンダからカタログモデルとして発売されている時代に、クルマ好きとして心の底から熱狂を感じるだろうか!?
スーツの方が楽しい
1000万円以上するクルマは、スーツだと50万円くらいの感覚だろうか。イタリアの超高級アパレルブランドならば、既製服でもそれくらいの価格を提示している。しかしスーツの世界は楽しい。10〜20万円くらいの価格帯で勝負する「日本製スーツ」のクオリティーは十分に感動できるレベルにある。着心地は最高にエキサイティングだし、これが日本のアパレルの底力か!!と感銘を受ける。クルマならば、300〜400万円くらいのコスト感覚だけど、その洗練度は1000万円クラスのクルマに匹敵する!!シビックtypeRのようなものだろうか・・・。
感動クオリティ
オンワード(五大陸、Jプレス、ポールスミス、カルバン・クライン)やレナウン(ダーバン、アクアスキュータム)が、メンズスーツに関しては五大陸とダーバンを前面に押し出して「日本製&日本ブランド」を掲げて正面突破を図っているのも素晴らしいけども、とことん表裏のメイン素材にこだわり、細部のディテールにこだわり、最高の既製服スーツを作っていると個人的に認定しているのは「三陽商会」(ポールスチュワート、マッキントッシュ・ロンドン)と「大賀」(コルネリアーニ、ティモシーエベレスト・ロンドン、キャサリンハムネット・ロンドン)。この2社のスーツ作りこそが自動車業界での「MAZDA」であり、「三菱自動車」だと思う。
価値観の隔たり
「MAZDA」「三菱自動車」はすでにそのクオリティの高さで世界から最高レベルの評価を得ている。トヨタの営業はもし「デリカD5」や「MAZDA3」をトヨタ系ディーラーで扱えるなら今の倍以上は軽く拡販ができるとか豪語している。乗ってシミジミとそのクルマ作りの良さを感じられる。日本やドイツの他のメーカーではかなり少なくなった。カローラスポーツとかVWゴルフとか・・・申し訳ないけど、どこか間が抜けている。なんだろうなこの無粋な感覚は、失礼ついでに言ってしまうと、「ヒューゴ・ボス」っていうドイツのスーツブランドに近いかも。好んで着ている人もいることは承知の上ですが、VWゴルフとヒューゴ・ボスのスーツをコンボする感覚は全く理解できない・・・。
無粋&無国籍
VWゴルフとか、ヒューゴ・ボスとか、ある種のオカルト的な無粋さを誇るレンジの製品はとりあえず無視して話を進めよう。あまりに高額すぎるのか、価格の割に刺さるポイントも少なそうで、それほど売れている印象はないけど、元気に新型の高級モデルを次々と発売しているAMGやレクサス。そのとてもエレガントでスポーティなモデルは、一体地球上のどの辺の景色にマッチするのだろうか!?失礼を承知で言ってしまうと、そのデザインはあまりにも無国籍でその演出はいたって「同調」的にしか感じない。旅行のパンフレットにある切り取られた絶景(京都とか熱海とか)や、マンガの景色の中でならばレクサスLCやAMG・GTは輝くかもしれないが、六本木や広尾のような寒々しくて、どこかプレハブっぽいチープな街並みには全くもって殺風景だ。
カミングアウト
もちろん高級車は特別な階級にいる人々のために用意されているのだから、大衆的なクルマとは違い、地域性を排除したグローバルな統合されたデザインを用いている。ブランディングの中に特定の地域性を押し込んでいるMINIやジムニーとは全く持って意味合いが違うのだから。MINIもジムニーも日本市場で大人気だ。独特の存在感と「おひとりさま」社会との相性もなかなか良さそう。ほとんど利用できない後席なので、乗用車としては少々認めがたい部分もあるけど、高級車がつまらないから思いきってコレにしました!!って気持ちはわからないでもない。ちょっと残酷かもしれないけど、そんな風に腹をくくってMINIやジムニーを選んだ諸兄は、どこか禿げ頭をカミングアウトして帽子を脱ぎ捨てたオッサンのような「清々しさ」と「哀愁」を感じる。「あくまでセカンドカーだ!!」と怒る人もいるだろうけど。
クルマ作りの危機だ
増税後のカーライフは、全ブランドの「KINTO」化によって平均的なクルマ作りが加速するかもしれない。定額制なので値引きなどもなくなる。あまりにも「金額」が大きな顔をする中で行われる経営努力とは「効率化」という名の元により一層のクラフトマンシップの否定が進むかもしれない。日本人全体がモノの価値を見抜く力を失ってきている。車格、ラゲッジスペース、モード燃費、金額など、数値化されている部分でしかクルマを判断できなくなってきているし、そのウラに隠れている価値を語れるカーメディア要員は絶滅の危機に瀕している。徳大寺有恒という故人のレビューを読み返すと、ふとジャギュアーとかシトローエンが欲しくなったりするものだが、K沢だろうがF野だろうがS村だろうが、これら現役連中のレビューを読んでVWゴルフやらトヨタ&レクサス車やらを買いたいとは全くもって思わない・・・。
日本が長期デフレだった本当の理由
日本人は「カネ」が好きだ。なんでもかんでも「金額」で価値を示したがる国民性かもしれない。彼らは「金額」が好きなのだ、フェラーリ、ランボルギーニ、ポルシェの各モデルの新車価格などまるでわかってないのに、クルマの価値を「金額」で語る。GT-Rの新車価格が500万円くらいだと思っているオッサンは結構多いし、BMWやベンツの新車価格は平均で1000万円くらいすると思っていたりする。そんな連中が平気で「日本車はまだまだレベルが低い・・・」とか言ってたりする。誰かコイツを異次元空間に放り込んでくれ!!と叫びたくなる。安倍内閣がいくら金融緩和をしたところで、「モノ」の価値が理解できずに「カネ」をありがたがってばかりの国民性から脱却しなければ、デフレを止めることは困難なのかもしれない。「日本車で十分」「スーツは量販店で十分」とかどーでもいい説教をしてくるオッサンも完全に無視するようにしている。オマエにクルマやスーツの何がわかる!!ってんだよクソデフレ世代が・・・。
MAZDAのメッセージは深い
MAZDAがCMを通じて国民を啓蒙している。「美しく生きる。」こそが自己実現の第一歩だと。これを表面的なメッセージだと感じてしまうオッサンどもには何を言っても無駄かもしれない。ちょっと恥ずかしさを感じるメッセージであるけども、受け手の感受性によってその問いかけは内面に大きく響く。MAZDAのメッセージを聞いて、すぐにクルマを買う人は少ないかもしれないけども、生活を取り巻くあらゆるモノへ今までとは変わった視線を向けるのでは!?近所に買い物に行ったり、そこらへんをジョギングする服装に気をつける。ちょっと高級な野菜や果物、ジュースなどを買ってみる・・・など様々なリフレインを起こしそうなメッセージだ。
より良い製品が生まれる社会とは・・・
毎朝飲む1L入りジュースを100円のものから300円のものに変えるだけでも、十分にジュースを作るクラフトマンシップに触れられるだろう。非常に危険な味見かもしれない。二度と100円のジュースには戻れなくなる可能性も。コンビニの100円のコーヒーは美味しい!!のだろうけど、スターバックスを批判するのは筋違いじゃないか!?150万円のちょっと前のアクセラは確かにいいクルマだったけども、だからといって250万円のMAZDA3にその価値がないなんて言う必要は全くない。・・・みたいなコトをMAZDAは言いたいのだろうけど。
日本の自動車販売は壊滅的だ・・・
「KINTO」によってトヨタが今後重点的に売り込んでいくモデルが絞り込まれているようだけども、どーでもいいがプリウス、アクア、クラウン、アルファード、ヴェルファイアを強制的に選ばされる人生は避けたい。そして同時にジムニーやMINIを積極的に選びたいとも思わない(好きじゃないから)。「ハゲ頭を晒して」街中を闊歩する、末期的なオッサンの人生を過ごす気には全くならない。ただただ最高のクラフトマンシップを発揮してくれるメーカーが、自信を持って仕上げた、金額的にも身の丈に合ったクルマを無理なく選んで乗れる・・・ってのがこれからもすっと最高のカーライフだと思っている。
危機的状況を変えられるメーカーは!?
2007年に発売された最終形ランエボは、三菱が、BMW・MやメルセデスAMGですらも完全に越えてしまっていることをハッキリと示した。今でも三菱が本気でスポーツセダンを設計すれば、再び世界の頂点に立てるのかもしれない。日産の傘下に入り、親会社はご存知の通りの「物笑い」のネタ化している状況では多くは望めそうにないけども。そしてホンダにも原点回帰を大いに期待したい。S1300、S2000の次はなんなんだ!?世界を震撼させた初期型のオデッセイやアコードのような「クオリティを重視」したクルマ作りこそがホンダの躍動の原点だったじゃないか!?
やっぱり・・・
そしてなんといっても「復活」を予感させるのが、ドイツのBMWかもしれない。今こそヘーゲル的な「創発」が起こるタイミングな気がしてならない。どの大手メーカーよりも「保守的」な設計は、2019年の今でこそ、もっと盛大に評価されてもいいのではないか!?コンサバとは立派なブランドアイコンであり、MAZDAが啓蒙する「美しく生きる。」という問いかけへの強烈なアンサーになっている。ノイエクラッセ、E46の次が・・・そろそろ起こりそうな予感がするんだ。再び世界中のクルマ好きが「やっぱりBMWは正しかった!!」と涙を流して謝罪する日が近いかも。「KINTO」も「ハゲ・カミングアウト」も嫌な人には、ビーエムがやっぱりいいんじゃないかと思うんだよね。