日本社会に起きた異変
このブログを書いているCARDRIVEGOGOは「輸入車が嫌い」だと思われているかもしれないけど、そんなことはないです。メルセデスもビーエムも大好きです。自動車に目覚めるきっかけは大学時代に憧れたM5(E39)ですし、メルセデスのCL(現Sクラスクーペ)やSLにも憧れを持ってました。「最善か無か」にふさわしいモデルだったんじゃないでしょうか。その当時の輝きに比べると現在の「両雄」の姿はちょっと残念だなと感じます。
バブルのトラウマ
2000年頃のメルセデス&ビーエムは、全ての日本メーカーにとって「雲の上の存在」だったですし、その頃の意欲的な日本メーカーはこの2つのブランドをベンチマークしたとハッキリ公言することも多かったですが、今ではトヨタ、ホンダ、日産、マツダ、スバル・・・どこもメルセデスやビーエムは眼中にないみたいです。時代が変わってビジネス環境も大きく変わり、かつて日本メーカーが大きく躓いたバブルの頃のような高級志向なクルマ作りを、今では徹底してタブー視する風潮がメーカー側にはあるのかもしれないです。
レクサスの流転
まだ日本で北米のレクサス車がセルシオ、アリスト、ソアラとして売られている頃には、「憧れのトヨタ車」という日本の自動車文化を強く牽引する原動力がありました。ブランド内の販売台数ではカローラやクラウンの数字が大きかったのだけど、「クルマが欲しい」若者がトヨタに向けた大いなる関心はセルシオ、アリスト、ソアラ・・・アルテッツァでした。2005年のレクサス日本導入の頃からメルセデスやBMWと同じくビジネスの転換点を迎え、表向きは「レクサスに個性を!!」という意欲的な動き(本当は2001年の中国WTO加盟を受けての市場変動に備えた受け身の姿勢)をしていた。その結果として今のレクサスは世界のどこにもない「キワモノ」ブランドに成り果てた。比較してはいけないけど、それ以前のトヨタブランドから発売していた前述のモデル群も決して単なる「コピー」にはならず、ドイツ車のイメージを日本的な解釈で見事なまでに昇華させていたように思う。
ブランドイメージの陳腐化
安直に言ってしまえば、メルセデスやビーエムも2000年代に入り「中国市場」を意識した資本投下を選択せざるを得なかったのだろう。中国(香港、台湾含む)、韓国、東南アジアでの市場拡大は人口比や世界の工業発展の趨勢を見れば明らかだし、既存の欧州、アメリカ、日本といった市場をこれ以上掘り下げても利益に直結するような得るものは少ないとの経営判断だったと思うけど、この判断は正解だったのだろうか!? 確かにドイツ御三家&レクサスのグローバルでの販売台数は伸びてますけど、増加分のほとんどは下級モデルであり、確実に単価は落ちてきているので、利益率もそれほどの水準ではない。スバル、フォード、GMの方が・・・。
日本向けラインナップは180度変わった
アメリカ、カナダ、オーストラリア、北欧&西欧諸国(イタリア、スペイン、ポルトガルを除く)、さらにカタール、香港、シンガポールといった国々と比べてはるかに平均賃金が低くなっている日本市場において、メルセデスやビーエムは「諦めムード」で中国&東南アジア向けに拡充してきた低価格モデルを販売の主体にしている。中国ではこれらがよく売れているようだけど、AクラスやX1など日本メーカー車のOEMなの!?といったデジャブ感満載の佇まいなので、これが「ドイツ(ブランド)車」と言われても困惑するだけだ。
混乱の広がり
2000年以降のドイツブランドの方針変更の影響はさらに大きく広がっている。高級車作りにおいてそれらを参考にしていた日本メーカーも見事に迷走し始めた。V8以上のエンジンをこだわって採用していたSクラスがアジア市場向けには2010年代には直4を積んで発売されるようになり(日本ではあまりに不評で撤退)、当然ながらEクラスやCクラスに至っては日本市場ではほぼ直4。同じくライバルの7、5、3の各シリーズもそれに準じる形になっている。クラウンも今ではすっかり直4が主流だ。ただしこのクルマは2000年頃までセダンの中ではガラパゴス化した存在で、ゼロクラウンと呼ばれた2003年のモデルからクルマの実力は良くなってきたとされている。しかし2020年の現行モデルは賛否両論で紛糾している。作っている側のコメントも、もう何が正解なのかわかりません・・・みたいな感じだった。
悲劇の連鎖
クラウン、マークX、フーガ、スカイラインのトヨ日両陣営を代表するFRサルーンは2000年代前半にエモーショナルな印象すら与えていたし、やっと日本のセダンも「グローバル車」っぽくなって関心も高かった。他にも欧州向けモデルとして開発されていたアテンザ(GG)やアベンシスにも欧州車の香りが強く漂っていました。しかしバブルの後遺症というか、異次元なレベルで勘違いをしていた日本市場では、日本メーカーへの差別意識も強かったようで、2007年という実に変なタイミングでBMWが日本で史上最大の販売台数を記録します(今も破られていない)。
なぜE90が売れてしまったのか!?
何が後遺症で勘違いで差別意識なのかというと、この2007年BMWの販売の中心にあったのがE90系3シリーズなわけですが、3シリーズの歴史の中で「最低の出来」で欧州では予想以上に売れず、なんとアウディに欧州の販売台数で抜かれてしまうという失態を犯しています。今の価値観でまともに判断すればE90のヒットなんてありえなかったわけですが、残念ながら日本市場(と韓国市場)では先代(E46)を超える販売を記録してしまった・・・。
ユーザーの逃げ場
2000年代の国内市場はミニバンブームでしたが、ある程度はサルーンの市場も残されていて、バブル世代だけでなく、低賃金ながらも必死で青春を謳歌しようとしていたロスジェネ世代もE90を買っていた。そして不景気もじきに終わるだろう・・・という楽観論を軽く弾き飛ばすように、リーマンショックと東日本大震災が連続してやってくる。人間は絶望を直視はできない。「ハイオクだしターボなんて燃費悪いし・・・」とかいう捨て台詞を残して、残クレのE90を返却し、せっせとアクアに乗り換えるオッサンが急増。以来、この国では「ハイブリッドじゃなきゃクルマじゃねー!!」というイカれた空気に満ちている。ブレーキランプをチカチカさせて走る運転がド下手な人にはありがたいシステムであることは間違いないけど、あるレベル以上の乗り方をしている人にはトヨタのハイブリッドなんて全く魅力はないはず・・・。
「何もない世代」!?
様々な要因が複雑に絡みあった結果、20年前にあったクルマへの熱狂は消え入りそうな状況だ。日本で「一般的に」働いて生活していては、かつての偉大なメルセデスやBMWの伝統を受け継いでいるクルマ(FRでV8)を気軽に楽しむことは難しい。車両自体は無理すれば買えるだろうけど、誰の目にも社会の変化と不安定さは切実な不安の要因であり、たかだか年収1000万円程度ではどうにかなる問題でもない。なぜ日本人はアメリカ人より給料が低いのに、高級車は2倍くらい高いのか!?
日本メーカーに状況を変える力はあるのか!?
「メルセデスとBMWが悪い」「日本メーカーが悪い」「自動車行政が悪い」「多数の愚かなユーザーが悪い」「メディアが悪い」「シルバー向け市場が悪い」・・・何が一番悪いのかを決めるのは無理だけど、日本市場ではメルセデスとBMW及び2000年以降にそれらをベンチマークしたトヨタ(レクサス)&日産のFRサルーンには全く勢いがないという現実を、「変える」か「諦める」かの二択しかない。メルセデスとBMWが上級車種で稼ぐビジネスモデルでは無くなっていて、当然ながら過度な投資はされておらず迷走は今後も続くだろう。2021年にFRベースのSUVを、2022年にFRサルーンを発売すると息巻く MAZDAにこの悲惨な状況を変えるだけのアイディアはあるのだろうか!?
社会の価値観を変えるには!?
今のところ何も良い材料はないけども、もしかしたら?「有限」な人生の時間を切実に実感し、その瞬間の輝きを演出できる「服」、語らうに足る「食事」、至福の「酒」、と並んで全く退屈さを感じさせない「クルマ」にお金を使うことの価値を「共感」してくれる人が増えれば、十分に状況が変わるのではないか!?と期待している。名指しすることは控えるけども、なぜアパレルが潰れ、飲食店が流行らず、酒&クルマ離れが進むのか!?いうまでもなく「費用対効果」が限界を超えてしまっているからだ。
ハイデガーが定義している「退屈」
「見た目も退屈」「体験している時間も退屈」・・・この「W退屈」を平気で生み出す産業構造から脱却しないと、この国は終わる。見た目がダサくて、運転していても全く楽しくないクルマには150万円以上の価格はつけられないと見積もっているけど、現実には200万円でも300万円でも「広告のパワー」を使えば売ることだけは可能だ。ブランド史上最低のBMW車(E90)が日本では一番売れてしまった。失礼だが買っている連中には「疑い」なんてないのだろう。つまらない服、つまらない食事、つまらない酒に囲まれた日常をどれだけ「自己肯定感」を持って生きられるかは、ある種の才能なんだろうけどさ・・・。
ブログの意義
こういうことを書くと、「名誉棄損だ!!」とか粋がってくる人もいるけどさ、その人は今の状況に我慢できるのかもしれないけど、オレにはもう無理だ・・・訴えるでもなんでもしてくれ。「買うな!!」とは言わない。メチャクチャなスタイルのファストファッション・スーツを着て電車に乗ったり、コンビニで弁当を買ったり、缶入りのアルコールを飲んでいるオッサンは心の底から軽蔑する。そして〇〇なクルマに乗ってるオッサンも・・・。オレがやっていることは、信念を持って価値を感じるものを自身のブログを通じて発信しているだけだ、「気に入らない!!」って人もいるだろうけど、建設的な批判以外はノーサンキューだ。「伝わらない!!」って人もいるだろうから、今後も細々ながらこのブログを通じて個々に具体的に主張していきたい。
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