ダブルスタンダードと対話
「欲しいクルマがない」と言っている人が多い。もう10年くらいずっとそんな感じ。人気ブランドは何をやっているんだ!?クルマに対して倦怠感が渦巻く日本市場に再び緊張感をもたらすようなモデルがなかなか出てこない。要求のハードルが高すぎて全く条件に合わない・・・放置された日本市場のユーザーには諦めに近い認識の変化が生まれつつある。「これでいいんじゃね」本当に欲しいモノ(1stスタンダード)はこれじゃないけども、自分のライフスタイルを考えると妥協できるライン(2ndスタンダード)にある。クルマに限らず全てのお買い物に言えることだけど・・・。
無駄話
全ての人が憧れるわけではないけど、最初から1stスタンダードになるべくクルマを作り続けているブランドはいくつもある。フェラーリ、ランボルギーニ、マクラーレン、ロールスロイス、ベントレー、アストンマーティンなどの別次元の価格設定をしているブランドは当然として、他にもマセラティ、ポルシェはブランド全体的に1stスタンダードとして選ばれるべきモデルばかりを揃えている。日本のサラリーマンは一生懸命働いてポルシェかマセラティあるいは他のブランドから発売されているGT-RやM5などを手に入れればクルマ趣味として望むべく頂点にたどり着くことができる。しかし新車で買うとなると負担は決して楽ではない。長ったらしく前置きをしたけど、そうではなくて「欲しいクルマがない」ってのはごくごく現実的な価格で、1stスタンダードになり得るクルマがないって意味ですよね・・・。
嵌らない理由
現実的な価格(500万円以下くらい?)で、もう他のクルマが視界に入らなくなってしまうくらい夢中になってしまうクルマあるだろうか!?NDロードスターやジムニーなどオンリーワンなモデルならば、かなりの数の人々が1stスタンダードに乗ることができそうだけど、これちょっとした落とし穴があって、どちらも30年以上も続いているシリーズなので、年配のファンがたくさんいるわけです。クルマは好きなんだけど、そのクルマを愛好しているファン層が嫌いだから・・・ってことになる。同じようにトヨタ・クラウン、日産スカイライン、VWゴルフ、BMW3シリーズなど有名なシリーズほど近年ではフルモデルチェンジしてもサッパリなケースが多い。
MAZDAも・・・
マツダのクルマ作りに感銘を受けてブログを書き始めたけども、現状のマツダラインナップには正直言って1stスタンダードで選べるモデルが1台もない。MAZDA6(GJ型)とBMW3シリーズ(G30系)の比較なんてあまり興味はない。当たり前の話だけどどちらも先代と比べて大きく販売台数を減らしてしまった。3シリーズは3世代連続で下がり続けているし、MAZDA6も2世代連続で下がっている。どちらも以前に世界的な大ヒットを経験してしまっているので、このまま大きな変革無しには状況は好転しないし、多くの人の1stスタンダードに返り咲くことは難しいだろう。
革新は田舎で生まれる
ドイツの片田舎に本拠を構えるBMWは、1970年代に台頭し、80年代、90年代の欧州グランドツアラーを語る上で外すことができないマニアックなブランドとして息の長い活躍をしている。より都会的なイメージを持つメルセデスやアウディとは違って、ボデーやデザイン、カラーリングもどこか牧歌的で「草の匂い」が漂ってきそうな感じ。日本で最も西に本拠を構えるメーカーに似ている!? そんなBMWですが、コンサバ基調ながらも必死で洗練されたデザインを取り入れてくるアンバランスな雰囲気が世界中のファンを惹きつけるのかもしれない。
そして都会に憧れる
レトロスタイルの70年代80年代のビーエム車もとても良かったけど、90年代中頃に登場したE39系5シリーズのスタイルは偉大だった。突如として非常に繊細でシャープなボデーへと変貌したBMWはとても素晴らしい。バブル絶頂期に登場した三菱「初代ディアマンテ」やホンダ「2代目レジェンド」の都会的で普遍的なサルーンスタイルを余すところなく吸収して自前のデザインとして大きく完成させた。その後2000年代になり台頭したアウディのグリルを強調したデザインも見事に取り入れて、ディアマンテ&レジェンドのスタイルを21世紀バージョンにアップデートして現在も継続して使っている。2010年代にはインテリアデザインで人気を復活させたメルセデスを追いかけて、今後出てくるBMWはインテリアにも大きく手を加えてくるようだ。
他社へのリスペクト・ナンバー1!?
BMWは、三菱ライセンスの直噴ターボエンジンをEV以外の全モデルで採用するようになり、ボトムグレードにはM&Aでローバー経由で仕入れたホンダのFFシャシーを使ってラインナップを拡大している。どうやら三菱とホンダが大のお気に入りらしい。第二次世界大戦で日本のために最前線でエンジンを飛行機を開発し続けた三菱は、ドイツの軍用エンジンを手がけるもテストに不合格で却下されユンカースのライセンスエンジンを作っていたBMWにとっては雲の上の存在なんだろうし、70年代に出現しあっという間に北米市場であらゆるドイツメーカーを超えていったミラクルなホンダも好きで好きでたまらないから、お荷物でしかないMINIを英国工場ごと買収してそのメカニズムを接収したのだろう。BMWのマニアぶりには脱帽だ・・・。
頭おかしい・・・
一時期のBMWはSUVのラインナップをどんどん増やしていたけど、それでも3BOXのサルーンスタイルへのこだわりはとても強いように思う。テスラに勝負を挑む新型EVがまさかの「セダン」こんな決断をするのはBMWだけだろ(メルセデスとアウディはSUVでした)。1962年に「ノイエクラッセ」という新時代のクルマ作りを打ち出し出てきたBMW1500は、今時のセダン好きのハートを射抜くような伸びやかな3BOXスタイルを作っている。1962年と言えば三菱が小型車で4輪を作り始めたばかりだし、ホンダはまだオートバイだけの時代。メルセデスのサルーンスタイルの先祖となるW110は1965年の登場。当時にBMW1500に近い形で存在していたのはクラウンとスカイラインだけ!?
BMWを研究すると知識が増える
以前にブログでBMWを批判したことがあった。マツダのブログを書いていると、BMWに乗っているというコメント者が次々と現れては鼻持ちならないこと(人間的にヤバいこと)を書いていく。まだまだ新米ブロガーであり、かなりのストレスも感じた。とにかくどっかに行って欲しかったので、続けざまに「正論」を振りかざして当時のビーエム車を批判した。衝突安全基準、エンジン回転数、静粛性の欠如、ゴムパッキンなど内装品の省略などなど。いろいろなコメント者に煽られつつもあれこれ調べ考えてブログを書き続けたおかげで、今ではどのブランドのどのモデルであっても、長所と短所をあっさりと見抜けるようになった。全てはビーエムのおかげ。
BMWはもっと熱く語られるべきだ!!
残念ながら今のBMWに1stスタンダードで選べるモデルは見当たらない。しかし心情的には「最強の2ndスタンダード・ブランド」として讃えたい気持ちでいっぱいだ。不幸なことに上の世代の人々によってビーエムのメーカーとしての本質は大きく歪められてきた。何度もコメントをもらったが「日本メーカーはBMWをお手本にしてクルマを作っているのだから、BMWは絶対的に素晴らしい」とおっしゃる人が多い。その度に「具体的にどんな点ですか!?」って訊くと「ATが8速で・・・」とか歯切れの悪い答えに失望して「違うだろ!!中速域でのコントロール性とかじゃねーの!!」と説教したこともあった・・・オマエらしっかりしろ!!
復活の時
できることならば、上の世代にはさっさとBMWを引退してもらってY世代、Z世代にこのブランドを存分に吟味してもらえたらいいなと思う。現在に通じるモダンな3BOXデザインをいち早く完成させ、その後に現れたサルーンのスタイルを大きく決定づけるトレンドを素晴らしい選択をして吸収(トヨタとかレクサスの真似しなくてよかったね)。走りを楽しむドライビングカーとしてのあらゆるパラメータは平均以上をキープできている。もし1stになるようなモデルが出てきたらそれは素晴らしいことだけども、日本市場における「最強の2nd」というポジションはこのブランド以外に見当たらない。