成長戦略
東京、大阪市、福岡市のように、世界的な都市への成長・生き残りを目指すのであれば、テスラ車やBYD車あるいはBEV充電インフラへの補助金の交付も納得できる。シンガポールや香港では高級ブランドのBEVが当たり前に運用できるけど、日本の都市では不便すぎて全く使えない・・・という状況にはなっていないからこそ、日本の都市にも海外からの投資案件が次々とやってくる。
北欧や中国のBEV普及率を無理やりに上回る必要もないし、数字で比べることに何の意味もない。しかし日本でも経済資本の集積地となり得る都市部では、BEVが当たり前に個人所有できる環境を整えることは大事だ。日本に12ある百万都市だったり、地域の発展のために設置されている9つの100万人未満の政令指定都市(千葉、相模原、静岡、浜松、新潟、堺、岡山、北九州、熊本)ならば、運用はそこまで難しくはないだろう。
BEVの利便性
BEVが増えすぎると充電環境が不足するし、少なすぎると充電ステーションで採算が取れない。かなり前から日本でBEVを販売している三菱、日産、BMWが示したように、自宅に充電設備を持った所有形態はかなり現実的であり、本来は後続距離200km程度のシティコミューターでのBEV運用がメインになるはずだった。そこに付加価値を持ったテスラがやってきて、何もわかっていないカーメディアが単純なバッテリー容量の比較で、非常に戦略的だった既存のBEVの価値を貶めてしまった・・・バカ過ぎる。
アメリカ、中国、EU域内での「大陸型全方位都市間移動」をターゲットにした高容量のBEVを日本のスタンダードにするのは無理がある。欧州でもタクシー需要以外でBEVが多数派になっているのはノルウェー、アイスランド、スウェーデンなど国境越えが少ない地域に限られている。2023年の欧州のBEV販売で首位に立っているのは、プリウスが抜けたタクシー需要をうまく飲み込んだテスラ・モデルYである。実際のところBEV普及は個人より法人の判断に委ねられている。欧州では社用車の個人支給も一般的に行われている(カンパニーカー)。