「わがまま」に応えるトヨタ
トヨタが異次元のスポーツカー戦略を進める上で、GRヤリスでクルマに興味を持ってくれたユーザーを、さらにトヨタに繋ぎ止めるためには、ニーズを受け止める合理的なラインナップ展開が必要になる。GRヤリスの次はGRスープラへというステップアップはあるだろうけど、MTに乗り続けたい、車幅は抑えたい、価格を抑えたい、2シーターは困る、駐車場が狭くて2ドアでは降りられない・・・などなど、スポーツカーに向いてないよ!!と説教されそうなユーザーはたくさんいるだろう。
とてもではないけど、スポーツカーだけで「わがまま」に対応することは不可能だ。トヨタが日本一のモデル数の多さで知られる普通車ラインナップで、上級スポーツカーでは拾えなかった需要に応えていかなければならない。現状ではトヨタの上位モデルといえば、THSモデル限定のクラウンになってしまう。GRヤリスからステップアップして、クラウンスポーツを選んだとしたら、「重くてデカくて静かで曲がらない止まらない」の印象は避けられないだろう。静粛性に感動して気に入る可能性ももちろんあるけど。
トヨタへの偏見を打破しよう
決してクラウンスポーツが悪いわけではなくて、乗り換え前のクルマとの相性の問題だ。ハリアーやRAV4からクラウンスポーツへの乗り換えならば、価格差以上の価値を感じられることだろう。しかしGRヤリスやGR86をある程度気に入っていた人からの乗り換えは、ほぼほぼマイナスなイメージになるだろう。大雑把に言ってしまえば、トヨタからBMW、MAZDA、アルファロメオなどスポーティな乗り味で勝負するブランドへの乗り換えは「目から鱗」「感動しかない!!」と言った声が多いけど、その逆の乗り換えは一般的には不幸でしかない。
幸か不幸か、日本車の国内シェアは90%を超える。普通車に関しては日本車の半数以上がトヨタ車だ。トヨタから乗り始めてずっと同じディーラーで買い続ける。あるいはダイハツ、スズキの軽自動車や、ホンダ、日産の小型車を最初に選んだ人が、トヨタの中上位モデルへ乗り換えるなら、割とすんなり受け入れられるとは思う。しかしMAZDA、VW、BMW、プジョーなどに乗ってしまったユーザーがCVT 味全開のトヨタへの乗り換えは非常にハードルが高い。