86の登場で市場は激変した
それでもスポーツカーの人気は高く、中古車の価格高騰も起きていて、純粋にドライブ目的でクルマを買う人もまだまだ多い。トヨタ86が発売されて12年ほどが経過する。初代モデルは低価格の企業努力が評価されて、スポーツカーの枠を超えた販売台数を記録したが、その裏では本来はCセグ・ロードカーを選ぶユーザーがスポーツカーに流れる潮流を生み出した。
乗用車市場がSUVやミニバンばかりになったことで、スポーツカーの需要は高まった。居住性を大幅に犠牲にして、低重心でフラットな走行フィールに振ったスポーツカーをマイカーに選ぶことの、心理的&経済的なプレッシャーはほとんどなくなった。スポーツカーで街中を走ることへの抵抗感(音、目立つ)は人それぞれだと思うが、これまでそのニーズを担っていたCセグのスポーツハッチが2000年頃から一気に退潮したことも理由にあると思われる。
モジュール化するCセグ
2000年代にはVWもトヨタもCセグハッチバックに3.2Lや3.5LのV6を搭載するエモーショナルなホットハッチが存在していた。1997年頃からの世界的な環境意識の高まりやミニバンへのシフトが進んだ上、それど当時に急速に拡大する中国市場の税制に合わせて2L以下のエンジンが求められるようになる。日独の大手2社はグローバル急拡大路線を選択し、当然のようにV6のゴルフやブレイドを廃止した。
中国やアメリカで好まれるサイズに拡大したため、90年代後半には1100kg程度だったCセグハッチバックの車重が、2000年代後半には1400kg近くまで増えた。速度無制限のアウトバーンがあるわけでもなく、都市部の高速道路は混雑が慢性化、地方の高速道路は片側1車線で、しばしば軽自動車が制限速度以下で走る日本の道路事情では、高性能なCセグを好んで買う層が増えないのは至極当然である。