歴史は繰り返す
多分間違ってないから、誤解を恐れずに言ってしまおう。今時のミドルSUVは、1980年代90年代に売れに売れた「マーク2、チェイサー、クレスタ」などの後釜に収まった。ゆったりとした乗り味と上質で快適な移動空間には、多くのユーザーが不満なくお金が払える。これらのサルーンは「ハイソカー」とか呼ばれたが、2000年前後に直6エンジンが廃止されて姿を消した。その後V6に置き換わってマークXとして再出発したが、2000年代には直6エンジンを搭載したBMWがブランド史上で最もよく日本で売れた(実際は直4モデルが多かったようだけど)。
あまりに神格化されてて、カーメディアとクルマ好きがしばしば思考停止になってしまうが、直6エンジンの本質的な役割は、有体に言ってしまえば代表的な「ハイソカーのアイコン」である。M社はC○-5の後継モデルをFR化し、これに直6のディーゼルエンジンを搭載して大いに話題になった。スープラもBMWも、イニD的なストリートスポーツカーではなく「ハイソカー」であり、M社も直6エンジンで新時代の「ハイソカー」を演出している。だからM社はSUVにしか直6を載せないのだろう。
ハイソカーに中指を立てたホンダ
2012年に初代C○-5とともに「SUVブーム」が始まる。2017年登場の2代目C○-5によって「ミドルSUVのハイソカー化」が定義され、2022年にその後継モデルが直6エンジンで登場することによって「ミドルSUV=ハイソカー」の構図がより一層明確になった。M社は見事なまでに3世代のSUVで、業界全体を騒がせるトレンドを生み出している。M社のSUVが「王道トレンド」を刻み続ける一方で、反逆のホンダSUVは「カウンター・トレンド」を生み出そうとしている。
これは30年前と同じかもしれない。1980年代にトヨタがマーク2やクレスタで「ハイソカー」ブームを作る。そんな中でホンダは1990年にFFシャシーの「アコード」の足回りをフェラーリと同じ4輪ダブルウィッシュボーンに変え、「スポーツセダン革命」を起こす。同年にはNSXも発売して、F1の覇者が欧州メーカーのプライドをズタズタにすべく決起する。Vテックが搭載された自然吸気エンジンは、手組みのフェラーリエンジンと同等の8000rpmオーバーまで回った。しかもアコードでは飽き足らず、最強のスポーツセダンとして「レジェンド」を開発した。